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いとこのビニー(My Cousin Vinny):モナ・リサ・ヴィト(マリサ・トメイ)が着る花柄キャットスーツ

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Lisa (Marisa Tomei), wearing a floral catsuit during the “biological clock” scene.

世の中には、テレビをつけた時にたまたま放映されていたら、過去に何度見ていようが、その時に何をしていようが、気がつけば座り込んで見入ってる、という映画がある。

私はこの手の映画のことを勝手に「かっぱえびせん映画」と呼んでいるのだが、アメリカで1992年に公開されたジョナサン・リン監督の法廷コメディドラマ『いとこのビニー』(My Cousin Vinny)もまさにそんな一本。ちらりとでも見てしまったら最後、「やめられない、とまらない」で、つい最後まで見てしまう。

もちろんそれはこのお話が面白いからで、クライマックスの法廷シーンは何度見ても胸がすく。主演のジョー・ペシの軽妙な演技も素晴らしければ、この映画でアカデミー賞助演女優賞を受賞したマリサ・トメイの存在感も鮮やかだ。しかもこの映画、RollingStone誌のこの記事によれば、「ハリウッドの法廷映画で唯一、間違っている部分がひとつもない」と法曹関係者に言われるほど法廷描写が正確で、カマラ・ハリスや故アントニン・スカリア最高裁判事もお気に入りだったらしい。

だが、私がついテレビの前に座り込んでしまう理由は、実のところ別にある。

衣装だ。

Poster of My Cousin Vinny
My Cousin Vinny Movie Poster

『いとこのビニー』は、いわゆる「陸に上がった河童の活躍物語」だ。場違いな環境に放り込まれた主人公が、その異質さゆえに周囲から侮られながらも、最後にはその個性を武器に状況をひっくり返すという、昔からある王道の物語。

ニューヨークの大学生ビル(『ベスト・キッド』The Karate Kid (1984)のラルフ・マッチオ)とスタン(ミッチェル・ホィットフィールド)は、旅行中に立ち寄ったアラバマ州の田舎町で、思い込みと誤解から殺人を「自白」してしまい、殺人罪で逮捕されてしまう。なんせアラバマは死刑存置・執行州。有罪になったら死刑が待っている。逮捕されてようやく状況を飲み込んだ二人は、ニューヨークのビルの母親に、弁護士を雇うための金を送ってくれと頼む。だがビルの母親にはそれよりもっと良いアイデアがあった。

ビルのいとこのビニーを送りこむことだ!

ビニーこと、ヴィンセント・ラガーディア・ガンビーニ(ペシ)は、6度目の正直でようやくニューヨークの司法試験に合格し、弁護士になってまだ6週間も経っていない。殺人事件どころか、法廷での弁護経験すらない。だが、ニューヨークの荒波にもまれて身につけた世渡り術と議論の才能だけは誰にも引けを取らない。

そんな彼が、婚約者のリサことモナ・リサ・ヴィト(トメイ)を連れてアラバマ州の街に乗り込んでくる。土地に馴染むために、わざわざカウボーイブーツを履いて。

キャロル・ウッドによる衣装は、このカップルの登場シーンからすでに最高だ。

ビニーはグリースで固めたリーゼントヘアに、レザージャケット。首にはゴールドのコイン付きチェーンをぶら下げている。リサは肌をチラ見せしたトップスにボディラインをなぞるミニスカートを合わせ、レザーブルゾンを羽織って派手なサングラスをかけている。

黒づくめの二人が片田舎のひなびた風景の中にいるだけで、この映画の構図がすべて伝わる。

彼らは誰がどう見てもよそ者なのだ。

Marisa Tomei as Lisa in My Cousin Vinny (1992) © 20th Century

法廷にもレザージャケット姿で現れるビニーは、法廷マナーを重んじる判事の心象を早々に悪くする。彼が着る「スーツ」についての判事とのやり取りと珍騒動はこの映画を見る大きな楽しみのひとつでもある。

だが、この映画で本当に目を奪われるのは、リサの衣装。トメイ演じるリサが身にまとう、80年代の残り香を色濃くまとった服の数々がたまらなく魅力的なのだ。

ビニー同様、リサもまた、地味な服装が当たり前とされる法廷に、お構いなしの派手な格好でやって来る。

Joe Pesci as Vinny, Marisa Tomei as Lisa in My Cousin Vinny (1992) © 20th Century

コルセットのようにボディラインと胸元を強調する白黒のジャケットに、タイトな黒のミニスカート。あるいは、ナンシー・レーガンのクローゼットから借りてきたような真っ赤なスカートスーツ。深いVネックに肌が透けて見える服や、剥き出しの背中と大ぶりのアクセサリー。

どれも「上品」とは言い難く、むしろ悪趣味すれすれだ。だが、一見下品に思える服も、彼女が着ると抜群にキマってるところがなんとも魅力的なのだ。

Marisa Tomei as Lisa in My Cousin Vinny (1992) © 20th Century

なかでも忘れがたいのが、かの有名な「バイオロジカル・クロック(体内時計)」の場面で彼女が着ている、花柄のキャットスーツ。

キャットスーツといえば、まず思い浮かぶのは『バットマン』Batman シリーズのキャットウーマンで、滑らかで艶のある黒のラテックスのものだろう。身体にぴたりとはりついたその服は、危険と挑発、そしてクールな自信を即座に感じさせる。

だが、モナ・リサ・ヴィトのキャットスーツは、その定番イメージを妙な方向へ裏切ってくれる。

Joe Pesci as Vinny, Marisa Tomei as Lisa in My Cousin Vinny (1992) © 20th Century

彼女が着ているのは艶やかな黒ではなく、まるでおばあちゃんの家にあるソファー生地で作ったような大胆な花柄。しかも背中が大きく開いている。普通なら悪趣味になりそうな一着なのに、この映画の中ではこれが不思議な説得力を醸し出す。

洗練と野暮ったさ、セクシーさと滑稽さ、そして甘さと妙な獰猛さが絶妙なバランスで同居しているのだ。その混ざり具合がたまらない。

森の中の小屋でこの服を着たリサは、婚約者のビニーに詰め寄り、自分の体内時計は「チクタク(ticking)」 しているのだと怒りをぶつけながら、苛立たしげに足を踏み鳴らす。だが観客の目を引くのは、彼女の焦りや怒りよりもその圧倒的な存在感だ。花柄のキャットスーツが、リサの気の強さと自信、そしてフェミニンさをこれ以上ないほど引き立てているのだ。

モナ・リサ・ヴィトは、「場違いな都会の女」であり、「弁護士についてきたきれいなお飾りの女」であり、「見くびられる側の人間」として映画の中に登場するが、実はこの映画のヒーローであるビニーの最大の理解者であり、彼のブレーンでもある。状況を把握し、的確に意見を述べ、ビニーの足りないところを補う。

法廷でも街中でも、リサの服は明らかに周囲から浮いている。だが彼女はそんなことを少しも気にしない。「女性ならこういう場面ではこういう服を着るべき」といったお節介な常識などどこ吹く風だ。人からどう見られるかより、自分が着たい服を着ることの方が大切。その揺るぎない自信がなんとも格好いい。

「派手な服を着ている女は頭が悪い」
「伝統的なドレスコードを守らないのは常識はずれ」

こんな偏見を、この映画のリサは軽々とひっくり返してくれる。

派手な服を着ることと、賢くあることは別に矛盾しない。『いとこのビニー』は、そんな当たり前のことを1992年の時点で実に痛快に見せてくれていた。

だから何度見ていようが、テレビで放映されていたら、そのまま最後まで見てしまうのだろう。モナ・リサ・ヴィトが次にどんな服で画面に現れるのかをもう一度見たくて。

そして、あの花柄のキャットスーツを見るたびに思うのだ。こんなにも堂々と、自分のテイストと知性の両方をまとった映画のヒロインはそう多くない、と。

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