毎年春は新作のオープンが目白押しとなるブロードウェイ。
それもそのはず、6月に開催されるトニー賞の審査対象になるためには「カット・オフ」と呼ばれる日までにブロードウェイの劇場で作品をオープンしなくてはならない。
今年のカット・オフ・デイは4月27日で、それまでにオープンを予定する作品がそれこそ溢れるほどある。
その中から豊作のミュージカルに限定して注目作品をご紹介しよう。
トニー賞候補の発表は5月2日。
さて、どの作品が候補に入るか?
(以下、タイトルのアルファベット順)
Amelie, A New Musical

2001年に公開されて大ヒットとなったジャン・ピエール=ジュネの映画『アメリ』がミュージカルになった。
人とコミュニケーションするのが上手くなく、無口だけれど想像力豊かなアメリは、小さな、でもびっくりするような親切を人々に振りまいていては周りの人間にちょっとした喜びを与えていた。そんなアメリに恋が訪れた時、幸せになるためには心の内を口に出さなくてはいけないと気づくのだ。
脚本はトニー賞にノミネートされたミュージカル『Light in the Piazza』や『キスへのプレリュード』のクレイグ・ルーカス。
『ハミルトン』で去年のトニー賞にノミネートされたフィリパ・スーが主役アメリを演じる。
Amelie, A New Musical
プレビュー開始:2017年3月9日
オープン: 2017年4月3日
作: クレイグ・ルーカス(脚本)、ダニエル・メス(曲・歌詞)、ネイサン・タイセン(歌詞)
原作:映画『アメリ』by ジャン=ピエール・ジュネ&ギヨーム・ローラン
演出: パム・マッキノン
出演:フィリッパ・スー、アダム・チャンラー=ベラト、トニー・シェルドン
劇場:Walter Kerr オフィシャルサイト
Anastasia

1997年に公開された、20世紀フォックス初のアニメーション映画『アナスタシア』をベースにした新作ミュージカルだ。
ロマノフ朝ロシア最後の皇帝ニコライ二世はロシア革命により家族とともに監禁、銃殺されたが、長年皇帝一家が埋葬された場所がわからなかったため、末娘のアナスタシア皇女生存伝説が生まれ、アナスタシアを名乗る女性が数多く出現した。
マルセル・モーレットがこの伝説を戯曲化し、1956年にはイングリット・バーグマン主演で映画化されている(邦題は『追想』)。
今回のミュージカルは、クラッシックミュージカル『ラグタイム』でトニー賞を受賞したクリエイター達が作り上げた作品。
Anastasia
プレビュー開始:2017年3月23日
オープン: 2017年4月24日
作:テレンス・マクナリー(脚本)、ステファン・フラエティ(曲)、リン・アーレン(歌詞)
原作: 映画『アナスタシア』
演出: ダルコ・トレズニヤック
出演:クリスティー・オルトメア、デレック・クリーナ、ジョン・ボルトン
劇場:Broadhurst
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Bandstand

1945年、全国ラジオがアメリカの次のビッグなスウィングバンドを探すコンテストを開催した。シンガー・ソングライターのドニーはチャンスを求め、ジャズ仲間たちを駆り立て、戦争未亡人のジュリアを歌手に据えてコンテストに参加する。
昨年秋、Paper Mill Playhouseでワールドプレミアされて高く評価されたミュージカルが、1940年代のジャズとスゥイングのリズムに乗ってブロードウェイにやってきた。『ハミルトン』や『イン・ザ・ハイツ』の振り付けでトニー賞を受賞したアンディ・ブランケンベラーが演出・振付を担当し、『シンデレラ』や『Bonnie and Clyde』のローラ・オスネスと『Newsies』のコーリー・コットが主演。
ミュージカルにはダンスがなければという人にもお勧めの作品だ。
Bandstand
プレビュー開始:2017年3月31日
オープン: 2017年4月26日
作:リチャード・オベラッカー(脚本、歌詞、曲)、ロバート・タイラー(脚本、歌詞)
演出:アンディ・ブランケンベラー
出演:ローラ・オスネス、コーリー・コット、ベス・リーベル
劇場:Bernard B. Jacobs
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Charlie and the Chocolate Factory

ウィリー・ウォンカがちょっぴりダークなチョコレートとともにブロードウェイにやってくる!
世界中で愛されているロアルド・ダールの小説『チョコレート工場の秘密』を舞台ミュージカルにした本作は、2013年にロンドンで初演され、今年の1月に幕を閉じるまで3年と7ヶ月上演されていた作品。
1971年の映画ではジーン・ワイルダーが、2005年の映画ではジョニー・デップが演じたチョコレート工場の主、ウィリー・ウォンカをブロードウェイのスター、クリスチャン・ボールが演じる。
Charlie and the Chocolate Factory
プレビュー開始:2017年3月28日
オープン:2017年4月23日
作: デイヴィッド・クレイグ(脚本)、マーク・シャイマン(曲)、スコット・ウィットマン(歌詞)、レスリー・ブリカス(映画版音楽)
原作:ロアルド・ダール『チョコレート工場の秘密』
演出: ジャック・オブライエン
出演:クリスチャン・ボール、ジョン・ルービンスタイン、エミリー・パジェット、ジャッキー・ホフマン
劇場:Lunt-Fontanne
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Come From Away

9/11のテロの直後、ニューヨークの3つの空港に着陸予定だった38の飛行機と乗客乗員6579名は、急遽カナダのニューファンドランド島にある小さな街ガンダーの空港に緊急着陸することになった。
かつては大西洋を飛ぶ航空機の中継用空港として栄えていたガンダー国際空港もすっかり寂れ、人口も1万人に満たない。そこに次々と飛行機が着陸し、街の人口が一気に6割以上も増える。空域が開放され、飛行機の運行が再開されるまでの3日間、そこに滞在することになった様々な国から来た様々な人々とガンダーの街の人々との交流と友情を描いた実話に基づく作品。
ニューヨーカーは特に必見のカナダ発ミュージカルだ。
Come From Away
プレビュー開始:2017年2月18日
オープン: 2017年3月12日
作:アイリーン・サンコフ&デイヴィッド・ハイン(脚本、曲、歌詞)
演出: クリストファー・アシュレイ
出演:チャド・キンボール、ジョエル・ハッチ、ジェン・コレッラ
劇場:Gerald Schoenfeld
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Groundhog Day

ペンシルベニア州の街パンクスタウニーでは、毎年2月2日に冬眠から目覚めたグラウンドホッグの様子で春の訪れを予想するグランドホッグデイが開催される。その取材のために街を訪れていたシニカルなテレビの気象予報士フィルは、どうしたわけかタイムループの中に捉えられてしまう。
そして、退屈でたまらないと思っていたグラウンドホッグデイを何度も何度も繰り返し過ごすことになるのだ。果たしてフィルは、そのタイムループから抜けられるのか?
ビル・マーレイ主演、ハロルド・ライミス脚本・監督の1993年の映画『恋はデジャ・ブ』を『マチルダ・ザ・ミュージカル』のクリエイターたちが舞台ミュージカルにした。
4月9日に発表されたオリヴィエ賞でベスト・ニュー・ミュージカル賞を受賞したばかりの作品だ。
Groundhog Day
プレビュー開始:2017年3月16日
オープン:2017年4月17日
作: ダニー・ルービン(脚本)、ティム・ミンチン(曲、歌詞)
演出: マシュー・ウォーチャス
出演:アンディ・カール、バーレット・ドス
劇場:August Wilson
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Hello, Dolly!

ベット・ミドラーがブロードウェイの舞台に戻って来るとファンを大喜びさせ、昨年9月に前売りが発売開始となるや、初日の販売記録を更新して話題となった作品が、1964年のクラッシックミュージカル『ハロー・ドーリー!』だ。
キャロル・チャニング主演で初演され、同年のトニー賞で作品賞、主演女優賞を含む10部門を受賞して最多受賞作品となった大ヒット作で、1969年にはバーブラ・ストライサンド主演で映画化もされた。
ブロードウェイでのリバイバルは今回のプロダクションで4度目で、ミドラーはチャニングやストライサンドが演じたマッチメイカーのドーリー・リーヴァイ役を演じる。
共演はテレビ『そりゃないぜ!? フレイジャー』(Frasier)でおなじみのデイヴィッド・ハイド・ピアース。
Hello, Dolly!
プレビュー開始:2017年3月15日
オープン: 2017年4月20日
作: マイケル・スチュワート(脚本)、ジェリー・ハーマン(曲、歌詞)
原作:ソーントン・ワイルダー『結婚仲介人』
演出: ジェリー・ザックス
出演:ベット・ミドラー、デイヴィッド・ハイド・ピアース、ギャビン・クリール、ケイト・ボールドウィン
劇場:Shubert
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Miss Saigon

プッチーニのオペラ『蝶々夫人』をベースに、舞台をベトナム戦争時のサイゴンに移し、アメリカ兵とベトナム人女性の恋を描いた1989年のミュージカルのリバイバル。
日本でも何度も上演されているアラン・ブーブリル とクロード=ミシェル・シェーンベルクによるお馴染みだ。
今回ブロードウェイで上演されるのは、ロンドンで新たに作られ大ヒットしたプロダクション。
Miss Saigon
プレビュー開始:2017年3月1日
オープン: 2017年3月23日
終演:2018年1月14日
作: クロード=ミシェル・シェーンベルク(コンセプト・脚本・作曲)、アラン・ブーブリル(脚本・歌詞)、リチャード・モリトビー・Jr(歌詞)、マイケル・マーラー(追加歌詞)
演出: ローレンス・コナー
出演:ジョン・ジョン・ブリオーンズ、エバ・ノブルザダ、アリスター・ブラマー 劇場:Broadway
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Sunset Boulevard

3度のトニー賞受賞歴を誇るグレン・クローズが、ノーマ・デスモンドとしてブロードウェイに戻ってきた。
ビリー・ワイルダーの1950年の映画『サンセット大通り』をアンドリュー・ロイド・ウェーバーが舞台ミュージカルにした『サンセット・ブールバード』は、1993年ロンドン初演の作品。
脚本家のジョーは、借金取りに追われてサンセット大通りの邸宅に逃げ込んだことがきっかけで、サイレント映画時代の大スターで、スクリーンへの復帰を望むノーマ・デスモンドのために映画の脚本を書くことになる。だがノーマに誘惑され、贅沢な暮らしに溺れ、ジョーは半ば捕らわれの身になっていくのだ。
今回のリバイバルは、昨年ロンドンでソールドアウト公演となった新プロダクション。クローズは、本作が1994年にブロードウェイで上演された際に演じてトニー賞主演女優賞を受賞したノーマ役を再び演じる。
すでにトニー賞を受賞した役の再演のため、クローズは今年のトニー賞の審査対象にならないが、「21世紀最高の演技」と評する批評家までいる彼女のノーマは必見だろう。
Sunset Boulevard
プレビュー開始:2017年2月2日
オープン: 2017年2月9日
終演: 2017年6月25日
作: ドン・ブラック&クリストファー・ハンプトン(脚本、歌詞)、アンドリュー・ロイド・ウェーバー(曲)
演出: ロニー・プライス
出演:グレン・クローズ、マイケル・エグザビエ
劇場:Palace
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War Paint

ヘレナ・ルビンスタインとエリザベス・アーデン。
20世紀前半の美を定義することになったこの2人の女性は、ライバルとして競い合い、男が支配する社会で自らの名前を冠した化粧品ブランドを立ち上げ、女性に対する世間の見方を変えた革命的な女性たちだ。
その二人の並外れた物語を描いたのが、ミュージカルの『War Paint』。ミュージカル『グレイ・ガーデンズ』のクリエイターたちが作り上げた新作だ。
ヘレナ・ルビンスタインをパティ・ルポーンが、エリザベス・アーデンをクリスティン・エバーソールが演じる。この二人が競演すると聞いただけで舞台ファンが泣いて喜ぶブロードウェイの大スターたちだけに、期待が高まる。
War Paint
プレビュー開始:2017年3月7日
オープン: 2017年4月6日
作: ダグ・ライト(脚本)、スコット・フランケル(音楽)、マイケル・コーリー(歌詞)
演出: マイケル・グライフ
出演:パティ・ルポーン、クリスティン・エバーソール
劇場:Nederlander
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Featured Photo: Musical Bandstand, Photo by Jeremy Daniel