『ゴーストバスターズ』のレスリー・ジョーンズのツイッター騒動:トロールとの戦い

映画Ghostbusters『ゴーストバスターズ』に出演するコメディアン、レスリー・ジョーンズのツイッター騒動はまだまだ終わっていなかった。

映画のLAプレミアで着るドレス騒動についての原稿を書き終わり、さて映画はいつ見ようかと上映スケジュールを呑気にチェックしていたちょうどその頃、新たなツイッター騒動がジョーンズの身に降りかかろうとしていた。

騒動というよりは個人攻撃という方が正しい。それも、差別的で悪意に満ちた嫌がらせの攻撃だ。

1984年のアイヴァン・ライトマン監督映画Ghostbusters『ゴーストバスターズ』をリブートしたこの映画は、主要キャラクターを全て女性が演じることが話題になった。

オリジナル映画でダン・エイクロイド、ビル・マーレー、ハロルド・ライミス、アーニー・ハドソンらが演じたキャラクターを、メリッサ・マッカーシー、クリスティン・ウィグ、ケイト・マッキノン、レスリー・ジョーンズの4人のコメディアンが演じている。

女性が主役の映画や女性が演じる良い役が少ないハリウッド映画の中、メインキャストが全て女性のこの企画は一部で賞賛を受けた。だがその一方で多くの否定的な批判にもさらされた。

その批判の声は、今年3月3日に映画の予告編が公開されるとさらに高まる。

その中には、4人のゴーストバスターズのうちジョーンズが演じるキャラクターだけが科学者ではなく地下鉄職員で、黒人差別的なステレオタイプだという批判もあった。だが、この役はもともとメリッサ・マッカーシーが演じる予定だったことが明らかになり、またジョーンズがこの批判に対してツイッターで反論したこともあってか、さほど大きな問題には至らずに済む。

「なぜ普通の人がゴーストバスターになれないの? 理解できない。なぜそのゴーストバスターを演じるのが私では駄目なの? 私はパフォーマーだよ? いいから映画を見に行きなさいって!」

「普通の人が毎日世界を救ってる。もし私がステレオタイプなら、それでいい。私たちは皆そういうヒーロー達に囲まれて生きていて、それを当たり前のことだと思っているんだから」

 

大きな問題になったのは、メインキャラクターを全員女性が演じることに対する反発。それが表面化したのが『ゴーストバスターズ』の予告編への評価だ。

YouTubeにあげられた映画の予告編には異常なほどの「Dislike(低く評価)」が付き、映画の予告編としてはYouTube史上最低の評価を受けた。

現時点で37,029,914回再生された『ゴーストバスターズ』の予告編は、低評価が959,406。YouTubeにあげられている動画の中で、最も「Dislike」がついた動画ランキングで第10位に位置している。

これがどれくらい異常なことかについては、4月末にScreen Crushのマイク・サンプソンが詳しく分析した。

要は、最も低く評価された動画の100位までを見ても映画の予告編は他に一つもなく、どんなに評判の悪い映画でも予告編の低評価はせいぜい5000〜20,000程度なのに、『ゴーストバスターズ』の場合は桁が違う、これは純粋に映画や予告編に対する反応ではなくミソジニーによって駆り立てられた結果だ、というもの。

ここで比較としてあげられていたのは、去年劇場公開されたThe Fantastic Four『ファンタスティック・フォー』の予告編と、Netflixにて配信されたアダム・サンドラーのコメディThe Ridiculous 6『リディキュラス・シックス』の予告編。

映画やTVドラマの評価サイトとして有名なRotten Tomatoesで、トマトメーター9%という最悪の評価を受けたThe Fantastic Fourの予告編は、低評価が20,175票(注:現時点で20,271)。

同じくトマトメーターで前代未聞の0%という超最悪の評価を得たThe Ridiculous 6の予告編ですら、低評価は5,803票だ(注:現時点で5,971)。

ついでなのでこの夏公開されたハリウッド映画で評判が悪いものの予告編評価をチェックしてみたところ、トマトメーター32%のIndependence Day: Resurgence 『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』はYouTubeの予告編低評価が5559票(再生回数23,660,343)、トマトメーターが36%のThe Legend of Tarzan 『ターザン:REBORN』でYouTubeでの低評価が5,978票(再生回数26,223,205)だった。

トマトメーターが73%と言うまずまずの好評価を得ている『ゴーストバスターズ』が、95万を超える低評価を得るのは異常なことだとよくわかる。

これは全女性キャストによるリブートがオリジナル映画を愛するファンの一部から反感を買い、映画予告編の「Dislike」を増やそうというキャンペーンが張られた結果。YouTubeのコメント欄には女性差別的なコメントが増え、映画を配給しているSONY Picturesは差別的なコメントを削除しなくてはならなかった。

それでも、誰かが「俺たちが500000のDislikeを達成したぞ!」と書き込めば、別の誰かが「100万にしてやろうぜ!」と応じ、Dislikeの数は増えていった。

そんな映画が先週末に公開された。すると、反感の矛先が主要キャスト4名のうち唯一の黒人であるレスリー・ジョーンズのTwitterアカウントに向く。

もともと、キャスト全員がこの映画出演のせいで不快な嫌がらせの被害を受けてはいたが、ジョーンズのTwitterフィードに殺到した悪意あるメッセージは異常に多かった。

ジョーンズは当初、キャラクターが黒人差別的なステレオタイプだと批判を受けた時や、レッドカーペットで着るドレスにまつわる批判を受けた時と同様に、Twitterを通して自分の意見を表明して対応していた。

個人攻撃がひどくなると、そんなアカウントをブロックし、Twitter側に報告もした。

だが、ある時点からジョーンズはその悪意あるツイートをリツイートし始める。

「ブロックするのはやめる。そうしたら皆が私のフィードに流れてくる馬鹿げたものを見られるから。皆、悪意の存在を信じようとしない。本当に恐ろしい。」

「かつては、なぜセレブの中でツイッターのアカウントを持ってない人がいるのか不思議だったけれど、今はなぜだかわかる。ナイスな人間でいつつファンとコミュニケーションをとるのが難しいのは、世の中にはクレイジーな人がいるから。」

「『あんな奴らのレベルに身を落とすな』という人たちに言っておくけど、その段階はとっくに過ぎている。だから座っていなさい。私にどう反応すべきかは言わなくていい。」

映画予告編の「Dislike」を100万にしようと結託したネット上のトロール達が、次の標的をジョーンズと定めたところを想像すれば、ジョーンズがどれほどひどい集中攻撃に遭っていたかわかるだろう。

彼女を、5月末に射殺されたシンシナティ動物園のゴリラ、ハランベになぞらえたり、卑猥な写真や画像やNワードを連発する動画を送りつけたり、彼女の亡くなった兄を利用した攻撃まであった。

ジョーンズのTwitterアカウントそっくりの偽アカウントが作られ、ジョーンズになりすました者が差別的な発言を発信するようになると、事態はジョーンズの手に負えなくなる。

「ツイッター、あなたたちが言論の自由を守らないといけないのはわかってる。でもこのようなものを拡散させるのであれば何らかのガイドラインがなくてはならない。プロフィール欄を見ればわかるけど、中にはクレイジーな人もいる。アカウントを凍結させるだけじゃ不十分。そういう人たちは通報されるべき。」

ジョーンズに対する攻撃と彼女の窮状を見た多くのセレブやファン、Twitterを利用してのヘイト攻撃にうんざりしているユーザーが、#LoveForLeslieJのハッシュタグと共にジョーンズ支援を表明していた。

『ゴーストバスターズ』を監督したポール・フェイグもその一人。

「レスリーは私が知る最も素晴らしい人間の一人です。彼女に対する個人攻撃はどんなものであれ、私たち全員に対する攻撃です。#LoveForLeslieJ」

ジョーンズの助けを求める声に、TwitterのCEOジャック・ドーシーもジョーンズにツイートを送り、公開で手を差し伸べた。

「ハイ、レスリー。事態を追っています。時間があるときにダイレクトメッセージをください。」

だが、その後しばらくしてジョーンズはツイッターを去ってしまった。

「今夜私は涙と悲しみとともにツイッターを去る。1本の映画に出演したためにこんなことになるとは。映画を嫌うのは構わないが、今日私が受けた仕打ちは間違っている。」

その後、英国出身のジャーナリスト、マイロ・ヤノポロスがTwitterから永久に使用禁止処分になったというニュースが飛び込んでくる。

2007年に設立された保守系のニュースウェブサイト「ブライトバート・ニュース・ネットワーク」Breitbart News Networkでテック系エディターを務め、『ゴーストバスターズ』の手厳しい映画評も書いたヤノポロスは、Twitterでは影響力あるトロールとして悪名高い。

Twitterから過去に何度も使用停止処分を受け、今年の3月にはホワイトハウスでのプレス会見で、TwitterやFacebookの「政治的意図のある検閲」と言論の自由について質問した人物だ。

共和党の大統領候補、ドナルド・トランプのことを親しげに「ダディ」と呼び、自身を「インターネットで最も素晴らしいスーパー悪役(the most fabulous supervillain on the internet)」と呼ぶ彼は、リベラルやフェミニストなどを好んで標的にして攻撃する人たちから賞賛され、彼のTwitterには338,000以上のフォロワーがいた。

その彼が、Twitterを通じてジョーンズに対する嫌がらせを扇動していたという。

Twitterの処分に対してヤノポロスは「Twitterは自らの足を撃ち抜いた。Twitterはもうこれで終わった。これは、言論の自由を気にかける者はTwitterでは歓迎されないという明らかなメッセージだ。」というコメントをブライトバートに出している。

『ゴーストバスターズ』の封切り後の週末興行成績は4600万ドルで、ポール・フェイグ監督とメリッサ・マッカーシーがタッグを組んだ映画の中では最高の成績だ。

1億4400万ドルをかけて製作されたこの映画が最終的に大成功するかどうかはまだわからない。だがもしも、今回の一連の騒動を知った観客たちが、この映画の予告編に100万のDislikeを付け、ジョーンズを個人攻撃して喜ぶ人種差別的でミソジニーな勢力を打ち負かすために映画館に殺到したら?

この映画は記録的な成績を残すかもしれない。

 

*追記:レスリー・ジョーンズは、7月21日の午後(NY時間)にTwitterに復帰した。

ええっと、ある女が近づかないでいられると思ったらしい。でもそれじゃあ誰がゲーム・オブ・スローンズのライブ・ツイートをするんだよっ!!

 

*追記2:8月24日、レスリー・ジョーンズの個人ウェブサイトが何者かにハッキングされた。詳細はこちら

*追記3:レスリー・ジョーンズのウェブサイトハッキング事件は、現在米ホームランド・セキュリティが捜査中。このハッキングは、ジョーンズのウェブサイトがオフラインになる前の状態から、ヤノポロスがTwitterから永久使用禁止処分を受けたことに腹を立てた彼の支持者たちが報復としてやったのではないかと推測されている。詳細はこちら

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About Sooim Kim

映画館や劇場内、テレビの前に生息する夜行性ヒト科のメス。知能はチンパンジーよりやや高い。どう猛で群れを作らず、映画、演劇、TV番組等、面白いものを求めてさまよう性質がある。前方に突き出た口から毒性の批評を吐き、時折好んだキャラクターに変身する。機嫌が良いと映画などのワンシーンを再現することが確認されている。

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