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“Man…was in the forest.”

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「人間…が森に来たの。」

オーストリアの作家フェリクス・ザルテンが1923年に発表した児童文学『バンビ 森に生きる』 Bambi: Eine Lebensgeschichte aus dem Walde をもとにしたディズニーのアニメ映画『バンビ』(1942)は、森で生まれた雄の子鹿バンビの誕生から成長を描いている。

ウサギやスカンク、フクロウなどの森の小動物や鳥たちと友達になったバンビが、仲間の鹿たちに出会い、母に教わりながら森での生き方を身につけていく。

森で暮らす動物たちにとって、一番の脅威は人間だ。

草原で戯れていたバンビが初めて人間の脅威に遭遇するのは一発の銃声を通してだった。銃声に怯えた鹿たちが森に駆け戻り身を隠す。バンビとその母もだ。人間が去って安全になった後、母に促されて隠れ場所から出てきたバンビが母に「なぜ逃げたの?」と問う。

母の答えがこのセリフだ。

人間…が森に来たの。」(“Man…was in the forest.”

私がこの映画を見たのは大人になってからで、自然や動物にとっての一番の脅威が人間であることを淡々と描いたこの映画のストレートさにとても驚いたものだ。

それと同時に物語半ばに登場する山火事の描写や、夜に風にそよぐ草原や動物の毛を照らす月明かりの輝きの表現に感嘆したものだ。

ディズニーといえば1937年の『白雪姫』Snow White and the Seven Dwarfs に始まり、『ピノキオ』Pinocchio (1940)や『ダンボ』Dumbo(1941)、『シンデレラ』Cinderella(1950)等々、 ファンタジーをアニメ化した作品で有名だが、森の動物が見つめる人間の脅威を描いた『バンビ』もまたおすすめの映画の一つである。

『バンビ』
Bambi (1942)

監督:デイヴィッド・ハンド
脚本:パース・ピアース、ラリー・モーリー、ジョージ・スターリングス、メルヴィン・ショウ、カール・フォールバーグ、チャック・カウチ、ラルフ・ライト
原作:フェリクス・ザルテン『バンビ』(Bambi: Eine Lebensgeschichte aus dem Walde)
製作:ウォルト・ディズニー
作画:フランク・トーマス、ミルト・カール、オリー・ジョンストン、トラヴィス・ジョンソン、エリック・ラーソン
撮影:ボブ・フロートン
音楽:フランク・チャーチル、エドワード・プラム
編集:ジャック・アトウッド
出演:ボビー・スチュワート、ドニー・ドゥナガン、ハーディ・オルブライト、ジョン・サザーランド、スターリング・ホロウェイ、ポーラ・ウィンスロウ、アン・ギリス、フレッド・シーリズ、スチュアート・アーウィン

US公開日:1942年8月13日
日本公開日:1951年5月18日

Top Image: Bambi © Disney

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