映画と舞台と海外ドラマ

“Well, if there’s one thing I know, it’s how to wear the proper clothes.”

by

「そうね、私が知っていることがひとつあるとすれば、それはふさわしい服を着ることね。」

アルフレッド・ヒッチコック監督のサスペンス映画『裏窓』Rear Window (1954) が、今月アメリカ公開70周年を迎えた。

『裏窓』はコーネル・ウールリッチの同名短編小説(原題は It Had to Be Murder )を原作とし、ジェームズ・ステュアートとグレース・ケリーが主演した、数あるヒッチコック映画の中でも人気が高い作品だ。

事故で足を骨折した写真家ジェフは、グリニッジビレッジのアパートで車椅子生活を余儀なくされている。ジェフのアパートの裏窓からは中庭とそれに面した他のアパートの部屋が見え、ジェフは、猛暑の中窓を開けっ放しにして涼んでいる隣人たちを望遠レンズで覗き見しながら彼らの日常を観察して楽しんでいた。そんなジェフがある夜、女性の悲鳴を聞く。翌日、彼が観察していた隣人の一人ソーワールドの寝たきりの妻がいなくなっていることに気づき、ジェフはソーワールドが妻を殺害したのではないかと疑う。そして、ジェフを毎日訪問する社交界の華で恋人のリザと看護師のステラを巻き込んで素人探偵を始めるのだ。

このセリフは映画の冒頭、ジェフの取材旅行に自分もついて行きたいと話すリザとジェフが口論する場面で登場する。ジェフは、贅沢な暮らしに慣れているリザが自分が行くような過酷な自然や厳しい社会への旅に耐えられるはずがないと証明するために、「そのハイヒールはジャングルにぴったりだし、そのナイロンストッキングと6オンスのランジェリーは凍死する前にフィンランドで大ヒットするだろう」と嫌味を言う。それに対してリザが返すのがこのセリフだ。

出典:Universal Pictures Youtube Channel

このリザのセリフの後でもジェフの嫌味は続き、リザはさらに、

“Jeff, you don’t have to be deliberately repulsive just to impress me I’m wrong.”
(ジェフ、私が間違っていることを印象づけようとして、わざと不愉快な態度を取る必要はないのよ。)

とまで言うが、ジェフのこの態度はもうしばらく続く。

もっとも、ジェフがリザのファッションについて一言言いたくなる気持ちは理解できる。というのも、この映画でグレース・ケリーが着るイーディス・ヘッドがデザインした衣装はどれも素晴らしく美しく、このシーンでリザが着ている衣装はリザ曰く「パリから届いたばかり」で「$1,100のお買い得品」だ。 70年前の$1,100は現在の価値で一体いくらなのか? 考えると目まいがしてくる。

『裏窓』
Rear Window (1954)

監督:アルフレッド・ヒッチコック
脚本:ジョン・マイケル・ヘイズ
原作:『裏窓』It Had to Be Murder by コーネル・ウールリッチ
製作:アルフレッド・ヒッチコック
撮影:ロバート・パークス
音楽:フランツ・ワックスマン
衣装:イーディス・ヘッド
出演:ジェームズ・スチュワート、グレース・ケリー、セルマ・リッター、レイモンド・バー、ウェンデル・コーリィ

US公開日:1954年9月1日
日本公開日:1955年1月29日

Top Image:  Grace Kelly in Rear Window © 1954 Paramount Pictures

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