Theater Review: Constellations 『星ノ数ホド』

パラレルユニバースに存在する無限の可能性

1月13日にブロードウェイのThe Samuel J. Friedman TheatreでオープンしたConstellationsは、たった70分の2人芝居。2012年に英国で初演を迎えたニック・ペインの新作で、これがUSプレミアとなる。

とあるバーベキューパーティで、ローランド(『ブロークバック・マウンテン』Brokeback Mountainのジェイク・ジレンホール)とマリアンヌ(ShowtimeのTVドラマThe Affairs)でゴールデングローブ賞を受賞したばかりのルース・ウィルソン)が出会う。

もう少し正確に言うと、何度も、何度も、何度も、それこそ何度も出会う。この世界には無限のユニバースが存在し、それぞれのユニバースにはそれぞれのローランドとマリアンヌが存在する。それぞれのユニバースにはそれぞれの出会いがある。そういう量子学的な前提の中、観客は、ユニバースとユニバースの間をジャンプしながら二人の出会いを次々と見ていくのだ。

Constellations-1
Jake Gyllenhaal and Ruth Wilson

あるユニバースでは、二人の出会いはぎこちなく終わる。
別のユニバースでは、片方はもう片方に興味が無い。
また別のユニバースでは、片方が既婚者だ。
さらに別のユニバースでは、二人は意気投合する。

まるでカメラのシャッターがおりたかのように舞台が一瞬暗くなると、さっとユニバースが変わり、別バージョンの出会いが目の前で繰り広げられる。そうやって、この二人のロマンスから切り取られたいくつかのシーンが、何度も、何度も、何度も、それこそ何度もユニバースを変えては繰り返されていく。

同じ台詞が、違う間、違うトーンで口にされ、それぞれ違う結末が訪れる。
それがどんどん積み重なっていく。
すると一時間後、不思議なSci-Fiのお話に不思議な現実味が帯びて来るではないか。

Constellations-Ruth
Ruth Wilson

巧みに書かれたペインの芝居は、Sci-Fiという体裁をとりながら、その実、観客にも身近な事件や感情を描いている。ビビビとくる人との出逢いや、人と一緒にいることの幸せ。気持ちの移り変わり、裏切り。傷ついた心。致命的な病気。独りになりたい欲求。

Sci-Fi部分を強調するのはマイケル・ロングハーストのシンプルで優雅な演出だ。
さらに、舞台上にいくつも浮かべた風船と、ライトボックスのようなトム・スカットの抽象的な舞台美術、それを彩るリー・カロンの照明も、視覚的なノイズを排除し、観客を芝居に集中させる効果がある。

Constellations-Jake
Jake Gyllenhaal

そこに、人間的な現実味をもたらすのが二人の役者。

舞台上のウィルソンとジレンホールは、同じキャラクターの同じシーン、全く違う感情を、ほんの一瞬で演じわけてみせるのだが、その様子は、まるで素晴らしいバレエダンサーがパ・ド・ドゥを踊っているかのよう。

おそらく、台詞のトーンやタイミング、間、立ち位置、身体のあらゆる部分の角度までが正確に計算され、正確に演出されているはずなのに、振り付けや演出のかけらを見せないその演技はとても自然だ。

そのため、観客にはキャラクターの感情がリアルに伝わってくる。

Constellations-2
Jake Gyllenhaal and Ruth Wilson

芝居を見終わると、ある好奇心がむくむくと湧き出てきた。

「いったいこの芝居、どんな風に文字表現されているのだろう?」

複雑で、新しく、不思議で、でも現実味のあるSci-Fiドラマ。戯曲も手にとって読みたくなる秀作だ。

All Production Photos by Joan Marcus

Constellations
The Samuel J. Friedman Theatre
261 W 47th Street, New York, NY
オフィシャルサイト

プレビュー:2014年12月16日
オープン:2015年1月13日
終演:2015年3月15日終演

Credits: Written by Nick Payne; Directed by Michael Longhurst; Scenic & Costume Design by Tom Scutt; Lighting Design by Lee Curran
Cast: Jake Gyllenhaal and Ruth Wilson