ケイト・ブランシェット主演『欲望という名の電車』のチケット価格

今、ニューヨークで一番チケットが取りにくいショウといえば、ケイト・ブランシェット(Cate Blanchett)がブランチを演じている『欲望という名の電車』(A Streetcar Named Desire)だ。

いや、「取りにくい」どころか全く取れない。

現在、ブルックリン・アカデミー・オブ・ミュージック(Brooklyn Academy of Music)、通称BAMで上演中の『欲望』は、ブランシェットが共同芸術監督を務める、オーストラリアのシドニー・シアター・カンパニー(Sydney Theatre Company)の引っ越し公演である。

ワシントンDCでの公演に引き続き、11月27日から12月20日までの期間限定でBAMにて上演中だ。

19世紀半ばに設立されたBAMは、毎年世界中からパフォーミングアーツのよりすぐりをニューヨークに紹介してくれる非営利団体。2006年の春にシドニー・シアター・カンパニーを招いてイプセンの『ヘッダ・ガブラー』(Hedda Gabler)を上演し、主役ヘッダを演じたケイト・ブランシェットはこれがニューヨーク舞台デビューとなった。

その『ヘッダ・ガブラー』のチケットも早々に完売していたが、今回の『欲望』のチケットも、一般発売が始まるや否やすぐに完売。従って、チケットを買い損ねた人は、チケットを買ったはいいが行けなくなってしまった人から個人取引で買うしか手が無い。

そこに来て、12月3日付のニューヨーク・タイムズで『欲望』が大絶賛されたもんだから、今まで興味を持っていなかった人まで「見たい」という欲望を持ち始め、それが個人取引の価格を跳ね上げてしまった。

チケットを売りたい人と買いたい人を結びつけるオンラインサービスを提供するStubhubでの11月下旬の相場は、オーケストラ席で400〜600ドル。もともとBAMでは$30〜$120というリーズナブルな価格で売られていた席だ。

ニューヨーク・タイムズの劇評が出てからというもの、この相場が少しずつ上昇し始める。期間限定の公演の終演日が近づけば近づくほどチケット価格も上がり、今やとうとう$2500ドルのチケットまで出て来てしまった。まさに元値の20倍以上。信じられない高騰ぶりである。

ニューヨーク・タイムズのこの記事によると、BAMでは毎日、チケットは無いかという問い合わせの電話が鳴り止まず、かのマーティン・スコセッシ監督もこの金曜に観たいから席を用意してほしいと言ってきたらしい。

2500ドルのチケットは、スコセッシ監督ほどの資力がないと買えたものではない。

そう思っていたところ、先日ニューヨーク・タイムズにこの『欲望』をブロードウェイに持って来ようと画策しているプロデューサーがいるという記事が掲載された。

実現にはかなりたくさんの障害があるようで、持ってくるのはどうやら厳しそうではある。でも万が一ブロードウェイにやってくることになれば、その時は早々にチケットを買うべき作品だということは間違いがない。

Photo by Lisa Tomasetti

注:ちなみに、シドニー・シアター・カンパニーは来年の11月〜12月、本拠地にてブランシェット主演でチェーホフの『ワーニャ伯父さん』(Uncle Vanya)を上演する。『ヘッダ・ガブラー』と同じく、ブランシェットの夫アンドリュー・アプトン(Andrew Upton)の新脚色版で、共演もヒューゴ・ウィーヴィング(Hugo Weaving)。これもそのうちBAMに来るかもしれない。

Amazon Link

欲望という名の電車(字幕版)

欲望という名の電車 (新潮文庫)