マンハッタンの47丁目、ブロードウェイと7番街に囲まれたファーザー・ダフィー・スクエア(Father Duffy Square)にようやくtktsのブースが帰って来た。
tktsはブロードウェイやオフブロードウェイの当日チケットを2〜5割引で売るディスカウントチケット販売所で、Theatre Development Fund(TDF)が運営している。パフォーミングアーツの魅力を広める活動をしている非営利団体だ。
tktsは1973年以来この場所に据え置かれた「小屋」で営業していたが、その小屋のリノベーションが2006年5月に始まったのだ。
「今年のホリデーシーズンにオープン!」と高らかに謳いつつ、仮のtkts販売所が近くのマリオットマーキスホテルの屋根の下で営業を開始した。
ところが、その年のホリデーシーズンが終わっても、次の年のホリデーシーズンが終わっても工事は一向に進んでいる様子がない。
「いったいいつのホリデーシーズンにオープンするのだろう?」と首をかしげ、「ひょっとしたらマリオットマーキスの軒下が居心地良くて、やる気が無くなったのか?」と疑い始めていた頃、当初の予定から遅れること2年、ようやく今年のホリデーシーズン前に完成したのがこちら。

まるで新品のフィギュアやラジカセが、大切にガラスケースに入れられているようにも見えるが、電光掲示板でピカピカのタイムズスクエアにしっくり来るデザインだ。
しかし、なぜこんな小さな建物を建てるのに、そんなに時間がかかったのだろう?
そのわけは地下鉄にあった。
tktsが「建つ」ダフィー・スクエアの真下には地下鉄が走っている。
つまり、普通の建築物のように、地下を掘って建物の基礎を作ることができないのだ。
1973年以来、tktsが営業所として使っていた「小屋」も実は小屋ではなく、トレーラーハウスをtktsの赤いロゴをプリントしたキャンバス生地と赤いパイプとで化粧をほどこしたもの。
1999年には「リノベーション」のアイデアを募るデザインコンペが行われ、そこで選ばれたのがオーストラリアベースの建築事務所Choi Ropihaのデザイン。
ニューヨークで最も大きな建築事務所であるPerkins Eastmanが、Choi Ropihaのデザインに基づいて建てたのが、この斬新なガラスの建物だ。
階段の踏み面を支えるガラスの枠はオーストラリアで、ハイテク部分はウィスコンシン州で「プレハブ」され、現場で組み立てられた。
タイムズスクエア側に面した27段の赤い階段には総勢500人が腰かけられ、その階段の下には暖房システムとつながったパイプが通り、真冬でも階段が凍結するのを防いだり、チケットブース内部にこれまでなかった冷暖房を供給できるようになっている。
チケット窓口は北側に面し、12ある。
今後はチケット販売もスムースになって待ち時間も減ることだろう。

新装開店のtktsにブロードウェイのチケットを買いに行く場合は、これまでのように長蛇の列に並ぶ時間を見越して早めに行く必要はない。
だが、階段に登ってのんびりあたりを見回すために、時間に余裕を持っていくことをお勧めする。