Movie Review: Poseidon『ポセイドン』

酸素の無いところは嫌いだ。

だから、海亀にどんなに乞われても竜宮城には遊びに行かないだろうし、かぐや姫が乗り物をよこして招待してくれても、おそらく月にも遊びに行かないだろう。

そんな私にクルーズ旅行好きの友人が「クルーズはとても楽しいよ! 酸素もあるよ!」とアピールするので、一度くらいは行ってもいいかなと思っていた。

だが、その気がすっかり失せてしまったのは、映画『ポセイドン』(Poseidon)を見た後。

豪華クルーズ船が大海原の真ん中で異常波浪に遭ってドボーンと転覆してしまうのだ。行き先が急遽竜宮城に変更だなんて、そんなのは絶対ご免こうむる!

わたしにクルーズ旅行をあきらめさせた映画『ポセイドン』は、1972年の大ヒット映画『ポセイドン・アドベンチャー』(The Poseidon Adventure)のリメイク。それともポール・ギャリコ(Paul Gallico)の同タイトル小説を再映画化したものといったほうが正しいか?

パニック映画と言うと、災害に巻き込まれた人間の一人一人にスポットを当て、極限状態の人間の心理や人間模様、「何かが起こっても前進するべし!」という精神を描くのがお約束。

ロナルド・ニームが監督した1972年の映画も、「神は人間の面倒を見ている暇などないから自分で努力せねばならない」と信じる牧師のスコット(ジーン・ハックマン)を中心に、惨劇が起こっても前進しようとする人間たちのドラマを描いていた。

だが今回の『ポセイドン』は、見事なまでに人間ドラマを削っての再映画化だ。

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大晦日の夜、多くの客を乗せた豪華客船ポセイドン号では盛大にニューイヤーズパーティーが催されていた。ステージでは歌手のグロリア(Black Eyed Peasのファーギーこと、ステイシー・ファーガソン)が歌を披露している。

だがそのパーティの真っ只中、船は突如巨大な異常波浪に直撃され転覆してしまう。多くの乗客が一瞬にして命を失い、生存者はパニックに陥る。

負傷した船長は救助が来るまでその場に止まるよう命じるが、プロのギャンブラーのディラン(ジョシュ・ルーカス)は、そこに居ては助からないと信じ、脱出を企てる。

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そのギャンブラーの直感についていくという賭けに出るのが、元消防士で前NY市長のロバート(カート・ラッセル)、その娘のジェニファー(エミー・ロッサム)、シングルマザーのマギー(ジャシンダ・バレット)とその息子のコナー、建築家の老人ネルソン(リチャード・ドレイファス)、胡散臭げな男ラッキー(ケヴィン・ディロン)などなど。

1972年の映画では牧師についていった乗客たちだが、今回の映画ではギャンブラーについていく。神を信じている人間とサイコロを信じている人間。大災害に遭った時に自分ならどちらについていきたいか、ふと考えてしまう。

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人間ドラマを極力排した98分の映画は、キャラクター達のセリフが極端に少ない。

セリフの代わりに観客が耳にするのは、次々と襲ってくるガス爆発や迫り来る大量の水などの危機の音。

観ているこちらは恐怖におののき、映画館の座席の上で膝を抱えて小さく固まってしまう。

そうなるともう登場人物のセリフなんか聞いちゃいない。 いや、大音響にかき消されてセリフなんて良く聞こえない。

目の前のキャラクターたちがどんな人間でこれまでどんなことをしていたかなどどうでもよくなり、「とにかく早く逃げろ!」という気持ちになるのだ。

彼らを襲う困難に次ぐ困難を巨大なIMAXの大画面と大音量で見ていると、酸素のありがたみをひしひしと肺で感じ、心臓は激しく高鳴るのであった。

Photo © Warner Bros. Pictures

『ポセイドン』(Poseidon)

監督:ウォルフガング・ペーターゼン
脚本:マーク・プロトセビッチ
原作:ポール・ギャリコ
出演:カート・ラッセル、ジョシュ・ルーカス、リチャード・ドレイファス、エミー・ロッサム、ケヴィン・ディロン、ミア・マエストロ
全米公開:2006年5月12日
日本公開:2006年6月3日

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