『キング・コング』King Kongのワールドプレミアと勘違い

ミーハーなわたしは公開早々に話題の映画を見に行くのが大好きだ。

『スター・ウォーズ』(Star Wars)シリーズのようにコアなファンがたっぷりいる映画は、なるべくそのファンに混ざって一緒に見る。そうすると映画館がファンの熱気と喜びでムンムンして、映画を見る楽しみが2倍に膨れ上がるからだ。

しかし、話題の映画とは言え、日本でも今日から全国超拡大ロードショーが始まった映画『キングコング』(King Kong)はそこまで早く見に行くほどじゃないなとタカをくくっていた。

『ロード・オブ・ザ・リング』(The Lord of the Rings)シリーズ3部作のピーター・ジャクソンが監督した映画なので、『指輪物語』の映画ファンやピーター・ジャクソン監督のファンが集まることは予想されたし、きっと盛り上がるだろうとも思っていたのだが、さほど興味をそそられなかったのだ。

1933年に製作された『キングコング』は1976年にもリメイクされており、ストーリーも結末も全てわかっている。それなのに今回のリメイクは3時間を越える映画だと言う。おまけに先月映画館で見た予告編にもあまりそそられなかった。

そんなこんなで「ゆっくり見に行けばいいか」とのんびりしていたところ、ひょんなことから早々にこの映画をみる機会が訪れた。

ニューヨークで行われた『キングコング』のワールドプレミアに行くことになったのだ。

ラッキーなことに、このプレミアに招待された映画人の「デート」として付いて行くことになったのである。

映画のワールドプレミアなど行ったことがなかった無知なわたしは、きっとレッドカーペットとやらを踏めるに違いないと勝手に想像し、雪まで降って氷点下となった凍えるマンハッタンの寒空の中、ド根性の薄着、しかもシモヤケ覚悟の素足にオープントゥヒールを履いて準備を整えた。

トム・フォード デザインのイヴ・サンローランを身にまとってレッドカーペットを踏めば、両足がシモヤケになろうが何のその!

この日、製作会社のユニバーサル・ピクチャーズ(Universal Pictures)は、42nd Streetの7th Ave.と8th Ave.の間で向かい合って建つ2つの巨大シネコンを借り切り、抽選で当たったラッキーな一般映画ファンもご招待して、かなりドでかいプレミアを行った。

当然のことながら、一帯は一般の交通が制限されて大混雑を極め、人の山もすごい。
辺りはわたしのように、はじめてのプレミアに浮かれて寒さを感じない薄着の一般ピーポーがうようよ。

賢く且つスマートに、お車でプレミア会場の映画館に横付けしようとしたわたしたちは、セレブじゃないのを理由にレッドカーペット前に車を停めるのを禁止され、やむなく通りを曲がった黒山のひとだかりのど真ん中で車を降りるハメになった。

しかも、人ごみをかき分けてようやく映画館の前にたどりつき、いざ、レッドカーペットへ出陣というまさにその時、警備員からレッドカーペットの上に乗ることを “NO!”と禁止されてしまったのである。

ふと見ると、入り口はしっかりとベルベット・ロープで「セレブ用」と「一般ピーポー用」とに分けられている。

どうやら、せっかく氷点下の中を張り切って薄着でやってきた一般ピーポーは、見るからに暖かそうなレッドカーペットの上に足を乗せることを禁止され、スポットライトに当たって暖をとることすら許されず、映画館の中で凍え死ぬ運命にあるらしい。

なんということだ!

凍え死んではなるものかとコートにくるまって映画館の中に入ったわたしは、せめて無料でふるまわれるコークとポップコーンはしこたま食べてやるぞとばかりに、エレガントなイヴ・サンローランの服の両脇に食料をかかえ、座席に深々と身を沈めた。

映画が始まる。

その途端、わたしの頭の中から凍てつくような外の寒さのことや、一歩も踏めなかった赤い絨毯のことなど綺麗さっぱり消えて無くなり、またたく間に1930年代のニューヨークへとタイムスリップする。

そう、あっという間に映画の虜になってしまったのだ。

物語がどんな風に展開するかなど全てお見通しだというのに、胸のワクワク、ドキドキが鳴り止まない。

その原因はコングにあった。

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コングが素晴らしく感情表現に富んでいるのだ。

巨大なコングは言葉など話さないというのに、その表情やそぶりがまるで話しかけるようにいろんなことを物語る。

おそらくその種の最後の一頭となってしまったコングが感じているであろう孤独感。生贄として差し出されたエンターテイナーであるアンに魅かれた理由。そのアンを何としてでも守ろうとするコングの思い。

それらがスクリーンの向こうからひしひしと伝わってくる。

知らない間にわたしの心はコングにガシっと猿づかみされたも同然。

銀幕の向こうでギラリと光るコングの目を見つめると、なぜかコングと自分の心が通じ合っているような錯覚に陥って、胸が熱くなる。

そう、わたしはもうアンなのだ。

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コングを演じるのは、ジャクソン監督の『ロード・オブ・ザ・リング』3部作でゴラムを演じたアンディ・サーキス。アンを演じるのは、長年の下積みを経て『マルホランド・ドライブ』(Mulholland Dr.)でようやくブレイクしたナオミ・ワッツ(Naomi Watts)。美貌には恵まれながらも仕事に恵まれない舞台女優のアン役がピタリとはまっている。

わたしは間違っていた。

『キング・コング』は「ゆっくり見に行けばいい映画」ではない。今すぐ見るべき作品だったのだ。

それも、コングの目を実物大で見られるような大きなスクリーンで!

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ワールドプレミア上映の『キング・コング』を見おわって映画館の外に出たら、ニューヨークの街はさらに冷え込んで寒々としていた。

その後、豪華なアフターパーティもあったのだが、それには参加せず、わたしたちはコングが登ったエンパイアステートビルの近くまで足を伸ばすことにした。

そこにコングが居ないのを切なく感じながら。

All photos © Universal Studios

King Kong(『キング・コング』)

MPAA Rating: PG-13
上映時間:2時間9分
監督:ピーター・ジャクソン
脚本:ピーター・ジャクソン、フラン・ウォルシュ、フィリッパ・ボウエン
出演:ナオミ・ワッツ、エイドリアン・ブロディ、ジャック・ブラック、アンディ・サーキス

2005年12月14日全米公開
2005年12月17日日本公開

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