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“I just have to feel this way until I don’t feel this way anymore!”

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「こんなふうに感じることがなくなるまで、こんなふうに感じるしかないの!」

シドニー・ポラック監督の『トッツィー』Tootsie はアメリカで1982年に公開されたロマンチックコメディ映画だ。

ニューヨークで暮らす役者のマイケル・ドーシー(ダスティン・ホフマン)は、才能はあるものの完璧主義が災いして役者の仕事につけず、演技コーチをして生活費を稼いでいた。ある日、友人であり彼がコーチしているサンディ(テリ・ガー)がソープ・オペラのオーディションを受けることになった。だがサンディはルックスが役に合わないという理由であっけなく落とされる。マイケルは彼に仕事を見つけるのが難しいと言うエージェント(シドニー・ポラック)と口論の末やけくそになり、翌日、サンディが落ちたオーディションに女装して「ドロシー・マイケルズ」として乗り込んでその役に合格してしまう。マイケルが女優ドロシーとして演じたその役は単発の仕事だったはずなのに、視聴者に好評だったせいでレギュラーになり、そのためマイケルは女優ドロシーとしてとしての生活と売れない役者マイケルとしての二重生活を送ることになる。

そんな秘密の二重生活を守るために嘘を重ねる中、マイケルは自分の嘘を取り繕うためにサンディと一夜の関係を持つが、一方でドロシーとして出会ったソープ・オペラのキャストのジュリー(ジェシカ・ラング)に恋をする。マイケルはサンディを避けて嘘の上塗りを繰り返し、マイケルに避けられ続けて堪忍袋の緒が切れたサンディは、マイケルが劇作家のジェフ(ビル・マレー)とシェアしているアパートに乗り込んでいく。

この名セリフはマイケルが他の女性に恋をしていることをようやくサンディに告白した後、サンディがマイケルに対してぶちまける中で登場する。怒るサンディの気持ちをなだめようとするマイケルが「ああ、お願いだ、僕に何かできることがあれば言ってくれ」(Oh, please, tell me what can I do for you?)と言うと、サンディはこう応える。

「あなたが私のためにできることなんか何もないわよ! こんなふうに感じることがなくなるまで、こんなふうに感じるしかないの! それから言っとくけど、私にこんなふうに感じさせたのはあなたですからね。」(There’s nothing you can do for me. I just have to feel like this, until I don’t feel like this anymore, and you’re gonna have to know that you’re the one that made me feel this way.)

出典:Rotten Tomatoes MOVIECLIPS YouTube チャンネル

このシーンでのサンディのセリフはどれも素晴らしく他にもよく引用される名セリフがあるのだが、このセリフが抜きん出て印象に残るのは自分を傷つけた人に対して負の感情を抱くことを肯定しているからだ。

人生において友人や大切な人にひどく傷つけられることは残念ながらままある。その人が後悔して謝罪してくれても、こちらがそれを受け入れられるようになるまで時間がかかることもある。友人や大切な人だからこそそれを早く許したいと思っても、傷つけられた時に自分が感じた嫌な気持ちも本物だ。子供の頃から相手の間違いを許して謝罪を受け入れるのが人としてあるべき姿だと教えられて育った者にとってこのセリフは一種の解放で、「そうか、自分が嫌だと感じる気持ちを大切にしても良いんだ。気にしないふりをしなくても良いし、明るい気持ちになる必要もない。嫌な気持ちがなくなるまでは嫌な気持ちのままでいても良いんだ」と教えてくれるのだ。

この映画は翌年の第55回アカデミー賞で作品賞、主演男優賞(ホフマン)を含む10部門でノミネートされた。サンディを演じてこの名セリフを映画史に残したテリ・ガーの助演女優賞と脚本賞もノミネートされたが、どちらも受賞を逃し、助演女優賞はガーと並んでノミネートされたジェシカ・ラングが受賞した。

サンディをあたたかくユーモラスでリアルな女性として演じたテリ・ガーは2024年10月29日に亡くなった。79歳だった。

『トッツィー』
Tootsie (1982)

監督:シドニー・ポラック
脚本:ドン・マッグワイア、ラリー・ゲルバート、マリー・シスガル
ストーリー:ラリー・ゲルバート、ドン・マッグワイア
製作:シドニー・ポラック、ディック・リチャーズ
撮影:オーウェン・ロイズマン
編集:フレデリック・スタインキャンプ&ウィリアム・スタインキャンプ
音楽:デイヴ・グルーシン
出演:ダスティン・ホフマン、ジェシカ・ラング、テリ・ガー、ダブニー・コールマン、チャールズ・ダーニング、ビル・マレー、シドニー・ポラック、ジョージ・ゲインズ、ジーナ・デイヴィス、クリスティン・エバーソール

US公開日:1982年12月17日
日本公開日:1983年4月16日

Top Image: Teri Garr in Tootsie © 1982 Columbia Pictures

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