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Gun & Powder | Theatre Review — From the Archive

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Liisi LaFontaine, Ciara Renée, and Malik Shabazz Kitchen in “Gun & Powder” at Paper Mill Playhouse Photo by Evan Zimmerman

子どもの頃、盆や正月に親戚一同が集まると、大昔に死んだ、会ったこともない曽祖父母や大叔父、大叔母の眉唾な武勇伝を聞かされた、てなことはないだろうか? 同じ話を何度も聞くのに、聞くたびに話がどんどん大きくなり、面白おかしく粉飾されていく類のお話を?

2024年4月14日にニュージャージーのペーパーミル・プレイハウスでオープンした『Gun & Powder』は、まさにそんな話をもとにした新作ミュージカルだ。脚本と作詞を手がけたアンジェリカ・シェリが、代々家族に語り継がれてきた物語をベースに、作曲家ロス・バウムとともに作り上げた、痛快な西部劇ミュージカルである。

* 以降、一幕目のあらすじについて触れています

舞台は1893年のテキサス。奴隷解放宣言から30年が経っても、タルーラたち黒人小作農は白人のプランテーション・オーナーに借金で縛られ、自由とはほど遠い生活を送っている。

タルーラ・クラーク(ジューネット・バイアデル)は、自分を捨てた白人の恋人との間にできた双子の娘、メアリー(シアラ・ルネー)とマーサ(リーシ・ラフォンテイン)とともに汗水流して働きながら借金を返していた。だが、白人のプランテーション・オーナーは新たな口実を作っては借金を上乗せし、彼女たちをがんじがらめにする。

それに憤慨した勝気な娘マーサは、ある計画を思いつく。メアリーと二人で街に出て、白人女性向けの仕事に就けばいい。白人として通る自分たちの容姿を利用すれば、黒人女性では到底稼げないような大金を短期間で手にできる。それで母親の借金を返し、家族が暮らしてきた土地を守って自由を取り戻すのだ!

Ciara Renee, Jeannette Bayardelle, Liisi LaFontaine in Gun and Powder at Paper Mill Playhouse. (© Jeremy Daniel)
Ciara Renee, Jeannette Bayardelle, Liisi LaFontaine in Gun and Powder
at Paper Mill Playhouse. (© Jeremy Daniel)

二人は母親から護身用に渡された拳銃「オール・ベッティ」を手に、白粉をたっぷりとはたいて街へと旅立つ。姉妹は列車の乗客たちを観察し、彼らの立ち居振る舞いを真似ながら、白人として通る(passing)ための練習をする。

もっとも、姉妹の計画はあっという間に別のものへと変わってしまう。それというのも、自分たちを襲おうとした暴漢にマーサが銃を突きつけたところ、男たちが金を投げ出して逃げていったからだ。二人は白人として働くのはやめにして、白人として強盗になることを決意する。白人が黒人から搾取したものを取り返す。それで母の借金のかたをつけるのだ、と意気込んで。

この急展開に呆気にとられつつも感嘆していると、二人は次から次へと強盗を働いて、あれよあれよという間に伝説のお尋ね者になる。白粉で肌を隠し、拳銃を手にした二人の旅は、「母親と家を救う」という当初の目的を飛び越え、抑圧する側への仕返しという側面を持つようになる。

そして、姉妹はテキサスのとある街にたどり着き、恋に落ちる。メアリーが恋するのは、次の獲物として目をつけていたサルーンのオーナーで、白人の金持ち男ジェシー・ホワイトウォーター(ハンター・パリッシュ)。マーサが惹かれるのは、そのジェシーのもとで働く黒人男性イライジャ(アーロン・ジェームズ・マッケンジー)だ。

Hunter Parrish (center) as Jesse Whitewater in Gun & Powder at Paper Mill Playhouse.
( © Jeremy Daniel)
Hunter Parrish (center) as Jesse Whitewater in Gun & Powder,
at Paper Mill Playhouse. ( © Jeremy Daniel)

ここから物語は複雑になっていく。

メアリーは白人としてジェシーとの愛を育むが、マーサは白人になりすますことに抵抗を感じ始めるのだ。同じ目的で旅に出た双子の姉妹が、自分のアイデンティティを隠して過ごすうちに、「白人として扱われること」に対する考え方が変わっていることに気づく。

姉妹は、母を助けたいという娘としての愛情と、恋する一人の女性としての欲望、そして「自分は何者なのか」という問いの中で揺れ動く。そして、自分たちの本当の姿を隠して手に入れた自由が、同時に自分たちを縛っていることにも向き合わざるを得なくなる。

そんな姉妹の葛藤を傍で見ているのが、ジェシーのもとで働く黒人女性、シシー(オーレリア・ウィリアムズ)とフロー(ゾーニャ・ラヴ)だ。

彼女たちが最高だ。雑用をこなしながら、「あの唇で?」「あの髪で?」「あのお尻で?」と、シニカルさたっぷりに、「白人たちは気づいてないが、私たちは知っているよ。でも誰にも言いやしないけどね」と、仕草や視線で表現する様子がコミカルで、この作品の見せ場の一つになっている。

Zonya Love and Aurelia Williams in Gun & Powder at Paper Mill Playhouse. ( © Jeremy Daniel)
Zonya Love and Aurelia Williams in Gun & Powder,
at Paper Mill Playhouse. ( © Jeremy Daniel)

というよりも、このミュージカルには見せ場が多い。多すぎると言っても良い。

まるでテレビドラマのミニシリーズ1作分くらいの物語が1本の舞台ミュージカルに詰め込まれているので、次から次へとものすごいスピードで物語が展開し、気がつけば次の出来事が起きている。

そこにR&Bを基調とした楽曲を歌い上げる才能あふれる役者たちが加わるのだから、観ているこちらは息つく暇もない。

メアリーを演じるルネーはよく伸びる声で劇場を震わせるし、マーサを演じるラフォンテインのバラードも客席を魅了する。タルーラを演じるバイアデル、ジェシーのパリッシュ、イライジャのマッケンジーにもそれぞれしっかり見せ場がある。

Hunter Parrish in Gun & Powder at Paper Mill Playhouse. ( © Jeremy Daniel)
Hunter Parrish in Gun & Powder at Paper Mill Playhouse. ( © Jeremy Daniel)

そして、もう一つ、このミュージカルを特徴づけているのが「kinfolk」だ。クラーク姉妹の「kinfolk」こと、親類縁者たちが、ギリシャ悲劇のコーラス風にところどころに登場し、ゴスペルを歌いながら物語を語ってくれる。

このコーラスの使い方がとても上手い。単なるナレーターではない彼らが時折登場することによって、観客は、まるで親戚のおじさんやおばさんから昔の家族の武勇伝を聞かされているような感覚を味わうことができるのだ。

また、このコーラスのおかげで、この物語が単なる西部劇ではなく、「ある家族が自分たちの歴史をどう語り継いでいくのか」という話でもあることに気づかされ、「親戚から聞かされる眉唾な武勇伝」という感覚がじわじわ浸透してくる。

この「昔話感」を視覚的に支えているのが、エミリオ・ソーサによる時代に合った衣装と、ベオウルフ・ボリットによる物語本の挿絵のような背景美術だ。それらをアダム・オノレのムードのある照明が包み込む。

舞台全体を「語り継がれてきた昔の話」といった雰囲気でまとめる演出のスティーヴィー・ウォーカー=ウェブの手腕に唸る。

Cast of Gun & Powder at Paper Mill Playhouse. ( © Jeremy Daniel)
Cast of Gun & Powder at Paper Mill Playhouse. ( © Jeremy Daniel)

この作品には痛快な西部劇として楽しめる要素がたっぷり盛り込まれている。だが、観終わってからじわじわ効いてくるのはその先にある問いだ。

自分が何者であるかというアイデンティティについて正面から問いかける作品は多いが、本作が面白いのは、より良い人生を手に入れるために自分を偽ることの危うさと、「特権」をめぐる問いを重ね合わせているところ。

白人として扱われることで得られるものは大きい。安全も、お金も、社会的な信用も手に入る。だからこそ、白人として生きることには大きな誘惑がある。

だが、その「特権」を手に入れるためには、自分自身の一部を隠さなければならないとしたら?

拳銃と白粉を手にした姉妹が、自分たちが代々奪われたものを取り返していく。その痛快な物語に夢中になっているうちに、作品はふと、「では、その自由を手に入れるために、自分自身を偽ることになったら?」と問いかけてくるのだ。

在日韓国人として日本に生まれ育ち、幼い頃は親が選んだ日本名で生活してきた私にとって、この問いは決して遠いものではない。

たっぷり楽しみ、足取り軽く劇場を後にし、でもふと考えさせる作品だ。

Gun & Powder
Paper Mill Playhouse
22 Brookside Dr, Millburn, NJ 07041

上演時間:2時間30分(インターミッション含む)
プレビュー開始:2024年4月4日
オープン:2024年4月14日
クローズ:2024年5月5日

Book and Lyrics by Angelica Cheri
Music by Ross Baum
Choreographed by Tiffany Rea-Fisher
Directed by Stevie Walker-Webb
Orchestrations by John Clancy, Scenic Design by Beowulf Boritt, Costume Design by Emilio Sosa, Lighting Design by Adam Honoré, Sound Design by Connor Wang, Wig, Hair, and Makeup Design by J. Jared Janas & Tony Lauro, Fight Direction by Sordelet, Inc./Rick Sordelet, and Intimacy Direction by Crista Marie Jackson. Casting is by Tara Rubin Casting.
With: Liisi LaFontaine as Martha Clarke, Ciara Renée as Mary Clarke, Jeannette Bayardelle as Tallulah Clarke, Aaron James McKenzie as Elijah, Hunter Parrish as Jesse Whitewater

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