「クラーケンを解き放て」
映画好きでなくとも、誰でも一度は耳にしたことがあるのがこのフレーズ。
「最後の切り札を投入しろ!」とか、「秘密兵器を解き放て!」という意味で、スポーツやビジネスでも使われ、アメリカ大統領選がらみの陰謀論にも利用された有名なセリフだ。もちろんインターネットミームにもなっている。
このセリフが最初に登場したのは、1981年に公開された映画『タイタンの戦い』(Clash of the Titans)。レイ・ハリーハウゼンによるストップモーション特撮が有名な、ギリシャ神話を題材にしたファンタジーヒーロー映画だ。
神々の王ゼウスの血を引く英雄ペルセウス(ハリー・ハムリン)が、王女アンドロメダ(ジュディ・バウカー)を救うために神々の力と知恵を借りながら数々の怪物や困難を乗り越えていくという冒険物語。
このセリフは、ゼウス(ローレンス・オリヴィエ)が、海の怪物クラーケンを解き放つ場面で登場する。
だが、このセリフが一気に世界中に広まってポップカルチャーの定番になったのは、2010年に映画がリメイクされてから。
リメイク版でゼウスを演じたのはリーアム・ニーソン。神々しさを演出する輝く甲冑をまとい、独特のかすれた重厚な声で、
“Release the Kraken!”
「クラーケンを解き放て!」
と命令する。

背後から差し込む光やズームアップするカメラワークも相まって、このシーンは観客に強烈な印象を残した。
いや、観客だけではない。公開当時、このシーンとそれに続くクラーケンの姿は映画の予告編にも使われたため、本編を観ていない人にも「Release the Kraken!」というフレーズだけは強く記憶されることになった。
実は、クラーケンはノルウェーやアイスランドなどに伝わる北欧の民間伝承に登場する巨大な海の怪物だ。タコやイカのような姿で描かれることが多く、長い触腕で船を海底へ引きずり込む恐るべき存在として語り継がれてきた。

1981年版『タイタンの戦い』では、その北欧伝承の怪物がギリシャ神話の世界に登場する。これは映画独自のアレンジであり、デザインも一般的なクラーケン像とはかなり異なっている。

一方、2010年のリメイク版のほうには、1981年版のクラーケンとイカを掛け合わせたような、長い触腕をたくさん持ったクラーケンが登場する。

ちなみに、クラーケンは2006年公開の『パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト』(Pirates of the Caribbean: Dead Man’s Chest) にも登場するが、こちらは北欧の民間伝承により近い、イカを思わせる姿をしている。(と言っても、全体像はよく見えないのだが。)
この映画では、デイヴィ・ジョーンズがクラーケンを使って船を襲わせるが、デイヴィ・ジョーンズは「Release the Kraken!」とは言わない。仰々しい言葉を口にし、大きな木製装置を使ってクラーケンを目覚めさせている。
だからもし次に誰かが「Release the Kraken!」と叫んだら、思い出してほしい。このセリフの元祖は、なぜか北欧の怪物を解き放つ権限を持っていたローレンス・オリヴィエ演じるゼウスだということを。
『タイタンの戦い』
Clash of the Titans (1981)
Rating: PG
監督:デズモンド・デイヴィス
脚本:ビヴァリー・クロス
製作:チャールズ・H・シニア、レイ・ハリーハウゼン
撮影:デッド・ムーア
音楽:ローレンス・ローゼンタール
編集:ティモシー・ギー
特撮:レイ・ハリーハウゼン
出演:ハリー・ハムリン、ジュディ・バウカー、ローレンス・オリヴィエ、マギー・スミス、クレア・ブルーム、バージェス・メレディス、ウルスラ・アンドレス、シアン・フィリップス
US公開日:1981年6月12日
日本公開日:1981年12月19日
『タイタンの戦い』
Clash of the Titans (2010)
Rating: PG-13
監督:ルイ・レテリエ
脚本:トラヴィス・ビーチャム、
製作:ベイジル・イワンイク、ケヴィン・デラノイ
撮影:ピーター・メンジース・ジュニア
音楽:ラミン・ジャヴァティ
編集:ヴァンサン・タベロン、デイヴィッド・フリーマン
出演:サム・ワーシントン、リーアム・ニーソン、レイフ・ファインズ、アレクサ・ダヴァロス、ジェイソン・フレミング、マッツ・ミケルセン、ルーク・エヴァンス、ニコラス・ホルト
US公開日:2010年4月2日
日本公開日:2010年4月23日
Top Image: Screenshot from Clash of the Titans © Warner Bros.

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