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“You must always have faith in people. And most importantly, you must always have faith in yourself.”

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「人は常に人を信じねばなりません。そして何よりも大切なのは、常に自分自身を信じることです。」

アマンダ・ブラウンの同名小説を映画化した『キューティ・ブロンド』Legally Blonde (2001)は、何度見てもスカッとするフィール・グッド・ムービーだ。昔からある「ブロンドは頭が悪い」という偏見を巧く利用したコメディ映画だが、何よりも、自分らしくいることを讃えるエンパワメント・ムービーでもある。

LAの大学でファッション・マーチャンダイズを学ぶエル・ウッズ(リース・ウィザースプーン)は、恋人ワーナー・ハンティントン三世(マシュー・デイヴィス)からプロポーズされることを待ち望んでいた。だが、政治家を目指すワーナーから「政治家の妻には(ブロンド=頭が悪い)マリリン(・モンロー)よりも(ブルネット=頭が悪くない)ジャッキー(・ケネディ・オナシス)がふさわしい」と言われて捨てられてしまう。傷心のエルはワーナーが間違っていることを証明して彼の愛を取り戻することを決意する。そのためにはまずワーナーが進学するハーバード大学のロースクールに自分も入学しなくては!

友人たちの協力を得て見事にハーバードのロースクールに合格したエルは、元恋人が早々に婚約したブルネットのヴィヴィアン(セルマ・ブレア)からワーナーを取り返そうと奮闘する。だが、そうこうするうちにエルは自分が弁護士に向いていることを発見し、新たな人間関係も築いて自分の道を切り開いていくのだ。

伝統的に男性優位の法曹界に飛び込んだエルは、ピンクが大好きで、愛犬のブルーザーと常に一緒のいわゆる「できる女」のステレオタイプから外れるガーリーな女性だ。そのエルが自分らしさを全く失うことなく、ブロンドに対する偏見をはねのけながら女性差別やステレオタイプに自然体で立ち向かい、女性間の友情を大切にして活躍する姿は観客に大きなメッセージを発信する。髪の色やファッションといった見た目は女性の知性とは全く関係ない。ありのままの自分でいればいいのだ、と。

そのエルの素晴らしさが凝縮されたセリフが映画の最後に登場するこれ。ハーバード大学ロースクールを主席で卒業することになったエルが、卒業式の総代としてスピーチする中に登場するくだりだ。

「人は常に人を信じねばなりません。そして何よりも大切なのは、常に自分自身を信じることです」(”You must always have faith in people. And most importantly, you must always have faith in yourself.”)

このセリフが示す通り、映画の中で彼女が幸せを手にするのは自分自身を信じているからだ。「ブロンドは頭が悪い」と誰が考えようがエルには関係がない。エル自身は努力すれば自分がハーバードロースクールに合格できると信じているし、そして見事合格する。(彼女のこのポジティブさがよく現れているのは、エルがロースクールに合格したと聞いて驚くワーナーに、「え? 難しいってこと?」”What, like it’s hard?” と応える名場面&名セリフだろう。)

自分を信じて努力を続けるエルは、その過程で自分も他人もありのままに受け入れ、常に堂々と自分らしくいる。その姿が観客の心に響くのだろう。

リース・ウィザースプーンの魅力でいっぱいのこの映画は大ヒットとなり、2003年には続編の『キューティ・ブロンド/ハッピーMAX』Legally Blonde 2: Red, White & Blonde が公開された。さらに、2007年にはブロードウェイ・ミュージカルにもなった。また、2025年にはティーンエイジャーのエルを描いた前日譚のテレビシリーズ Elle がAmazon Primeで公開される予定だ。

『キューティ・ブロンド』
Legally Blonde (2001)
Rated: PG-13

監督: ロバート・ルケティック
脚本: カレン・マックラー・ラッツ、キルステン・スミス
原作:アマンダ・ブラウン著 Legally Blonde
製作:マーク・プラット、ロジャー・ジョーンズ、リック・キドニー
撮影:アンソニー・B・リッチモンド
音楽:ロルフ・ケント
編集:アニタ・ブランド=バーゴイン、ガース・クレイヴン
出演:リース・ウィザースプーン、セルマ・ブレア、ルーク・ウィルソン、ジェニファー・クーリッジ、マシュー・デイヴィス、ジェシカ・コーフィール、アリ・ラーター、ヴィクター・ガーバー、ホランド・テイラー、ラクウェル・ウェルチ

US公開日:2001年7月13日
日本公開日:2002年4月27日

Top Image: Reese Witherspoon in Legally Blonde (2001) © Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc.

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