「後悔を感じない日など一日たりともない。」
今年の6月にアメリカ公開30周年を迎えたフランク・ダラボン監督・脚本の映画『ショーシャンクの空に』The Shawshank Redemption (1994) は、スティーヴン・キングが1982年に発表した中編小説『刑務所のリタ・ヘイワース』Rita Hayworth and Shawshank Redemption を原作にした刑務所ドラマだ。
銀行家のアンディ・デュフレーン(ティム・ロビンス)は浮気をしている妻とその愛人を殺害した罪で裁判にかけられる。無実を訴えていたアンディはあれよあれよと言う間に有罪となり、終身刑を言い渡されてショーシャンク州立刑務所に収監される。刑務所内では暴力が横行し、刑務官たちも腐敗していた。だが彼は出口も希望もない刑務所生活の中で微かな光を見つけて正気を保ちつつ生き抜いていこうとする。
このセリフは、そんなアンディと刑務所の中で出会ってやがて親友となる、禁製品の「調達屋」レッド(モーガン・フリーマン)が仮釈放審査を受ける公聴会のシーンに登場する。
アンディと同様、殺人罪で有罪となったレッドは長年ショーシャンクに服役し、これまでに二度仮釈放審査に落ちていた。この審査のシーンは一度目は映画の序盤、ちょうどアンディが刑務所に入った頃に登場し、二度目は映画の中盤に登場する。どちらも審査官が事務的に同じ質問をし、仮釈放審査に通ろうと意気込むレッドがいかに自分が改心したかをアピールする。そしてどちらも不許可となり、仲間のところに戻らされる。
映画は終盤にさしかかり、すでに服役して40年が経過した頃、レッドが三度目の仮釈放審査を受ける。またもや同じような事務的な審査官に、またもや「自分が更正したと思うか?」(“Do you feel you’ve been rehabilitated?“)と同じ質問をされる。だがレッドの応えはこれまでとは全く異なっていた。
「更正」というのは政治家が作ったでっちあげの言葉で、自分にはそれが何を意味するのかさっぱりわからないと応えるレッドは、「本当に知りたいことは何だ? 自分のしたことを悔いているか、か?」(“What do you really want to know? Am I sorry for what I did?”)と逆に審査官に問う。そして続けて言ったのがこの名セリフだ。
「後悔を感じない日など一日たりともない。」(“There’s not a day goes by I don’t feel regret.”)
レッドはさらにこう続ける。
「それは私がここにいるからでも、あんたたちがそうすべきだと考えるからでもない。あの頃の自分を振り返るんだ。あの恐ろしい犯罪を犯した、若くて、愚かなガキのことを。私は彼と話がしたい。彼にバカな真似をするなと言って物事の道理を言い聞かせたい。でもそれはできない。あのガキはとっくにいなくなり、残されたのはこのジジイだけだ。私はそれを背負って生きていくしかない。更正? ただのでたらめな言葉だ。だからお若いの、さっさとその書類にハンコを押して、私の時間を無駄にしないでくれ。実を言うと、そんなくだらないことはどうでもいいんだ。」(“Not because I’m in here, because you think I should. I look back on the way I was then: a young, stupid kid who committed that terrible crime. I want to talk to him. I want to try to talk some sense to him, tell him the way things are. But I can’t. That kid’s long gone, and this old man is all that’s left. I got to live with that. Rehabilitated? It’s just a bullshit word. So you go on and stamp your form, sonny, and stop wasting my time. Because to tell you the truth, I don’t give a shit.“)
このセリフに至るまで映画が描いてきた刑務所内での出来事はレッドをすっかり変えてしまった。レッドはアンディとの交流を経て、若い自分がしでかした罪の重さを学んだのだ。
スティーヴン・キングは2016年のDeadLineのインタビューで自分の小説の映画化作品中、個人的に好きな作品はどれかと問われ、ロブ・ライナー監督の『スタンド・バイ・ミー』Stand By Me (1986)とともにこの『ショーシャンクの空に』を真っ先にあげていた。 どちらも彼の中編小説集、『恐怖の四季』Different Seasons に収められた小説の映画化だ。
『ショーシャンクの空に』
The Shawshank Redemption (1994)
上映時間:142分
監督:フランク・ダラボン
脚本:フランク・ダラボン
製作:ニキ・マーヴィン
撮影:ロジャー・ディーキンス
編集:リチャード・フランシス=ブルース
音楽:トーマス・ニューマン
出演:ティム・ロビンス、モーガン・フリーマン、ボブ・ガントン、ウィリアム・サドラー、クランシー・ブラウン、ギル・ベロウズ、ジェームズ・ホイットモア
US公開日:1994年9月10日
日本公開日:1995年6月3日
Top Image: Screenshot from The Shawshank Redemption © Columbia Pictures (1994)

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