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“I’m sorry, Dave. I’m afraid I can’t do that.”

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「すみません、デイヴ。申し訳ありませんがそれはできません。 」

スタンリー・キューブリック監督の壮大なSF映画『2001年宇宙の旅』2001: A Space Odyssey は1968年に公開された名作だ。脚本はSF作家のアーサー・C・クラークの数作の短編から着想を得て、キューブリックがクラークとともに執筆した。

映画は猿人が石板のような黒い謎の物体「モノリス」と接触して知能を得るという有名な「人類の夜明け」のシーンから始まる。その後、時は一気に流れ、人類が宇宙旅行をする時代に飛ぶ。デイヴ・ボーマン(キア・デュリア)ら5人の宇宙飛行士は、謎の木星探査ミッションに派遣される。彼らの乗る宇宙船ディスカバリー1号は知覚を持つ人工知能 HAL-9000 (HALは Heuristically programmed ALgorithmic computer の略)という最新型のコンピュータ・システムで全て制御されていた。HALの端末は赤い目の球形レンズで、宇宙船のあちこちに配されたその赤い目が宇宙飛行士たちの姿を見ながら会話をする。だが、そのHALが奇妙な挙動を示すようになる。

HALの能力に疑いを抱いたデイヴとフランク(ゲイリー・ロックウッド)は、HALに会話を聴かれないよう船外活動ポッドに入ってHALをどうすべきか相談し、一部の機能を停止させることにした。だがHALはその赤い目で2人の唇を読んで会話内容を把握し、二人の計画を阻止するために宇宙飛行士たちの殺害を決行する。まず船外活動に出たフランクが突然吹き飛ばされた。デイヴは急ぎ船外に出るが、その間にHALは人工冬眠中の他の宇宙飛行士たちの生命装置を切断する。何も知らないデイヴはフランクの遺体を回収し、宇宙船に戻ろうとHALにこう命令する。

「ポッド・ベイのドアを開けろ、HAL」“Open the pod bay doors, HAL.”

それに対するHALの応答がこのセリフだ。

「すみません、デイヴ。申し訳ありませんがそれはできません。 」“I’m sorry, Dave. I’m afraid I can’t do that.”

HALは非の打ちどころのない丁寧さでデイヴの命令を拒絶し、命令に応えられないことの謝罪までする。他の宇宙飛行士たちを皆殺害し、最後に残ったデイヴも酸素不足にしてじわじわ殺す予定のHALが、親しげに「デイヴ」と呼びかけて紳士的な言葉遣いで謝るのを聞くと背筋が凍る。

HALの声を担当したのは舞台で活躍していたカナダの役者ダグラス・レイン。物静かで、礼儀を感じる彼の声がHALの不気味さを増幅して観客に強い印象を残し、このセリフはあちこちで引用される名セリフとなった。

アンソニー・ホプキンスは、映画史上最高の悪役とされるジョナサン・デミ監督の『羊たちの沈黙』The Silence of the Lambs(1986)でハンニバル・レクターを演じた際、HALを参考にしたという。

SiriやAlexaと話すたびに私の心がなんだかざわついてしまうのも仕方あるまい。

『2001年宇宙の旅』
2001: A Space Odyssey (1968)

監督:スタンリー・キューブリック
脚本:スタンリー・キューブリック、アーサー・C・クラーク
製作:スタンリー・キューブリック
撮影:ジェフリー・アンスワース、ジョン・オルコット
出演:キア・デュリア、ゲイリー・ロックウッド、ダグラス・レイン

US公開日:1968年4月6日
日本公開日:1968年4月11日

Top Image: Screenshot from 2001: A Space Odyssey © MGM (1968)

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