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“Cow.”

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「牛」

1996年に公開されたヤン・デ・ボン監督映画『ツイスター』Twister は、竜巻を追いかけるストーム・チェイサー達を描いたアクション・アドベンチャー映画だ。

正確な竜巻の予報をより早く出すためには竜巻のデータが必要だ。ストーム・チェイサーのジョー(ヘレン・ハント)はデータを集めるためにチームと一緒に竜巻を追いかけていた。そのジョーの元に、かつて一緒に竜巻を追っていた元ストーム・チェイサーで別れた夫のビル(ビル・パクストン)が精神科医の婚約者メリッサ(ジェイミー・ガーツ)を連れてやってくる。ビルはメリッサと結婚するためにジョーと正式に離婚しようと書類にサインをもらいにきたのだ。だがジョーはのらりくらりとサインを避ける。そうこうしているうちに観測に絶好の竜巻が発生する。

ひょんなことから、ジョーはビルとメリッサと一緒に竜巻を追いかけることになる。そんな3人が目の前を横切っていく牛に遭遇する。このセリフはその時にジョーが言うものだ。

嵐の中で車を走らせていると、左手の竜巻が2つに分かれた。すると、吹き飛ばされた牛が突然目の前を飛んでいく。助手席のジョーは唖然としてポツリと言う。

「牛」( “Cow.” )。

車の後部席でクライアントと通話中だったメリッサも、「もう切るから、ジュリア。牛がいるの」( “I gotta go, Julia. We got cows.” )と驚く。

すると今度は別の方角から別の牛が前を飛び去っていく。ジョーが再びポツリ。

「また牛」(”Another cow.”)。

案外冷静なビルはすかさず、「あれは実は同じ牛だったと思う」( “Actually, I think that was the same one.” )と言う。

空飛ぶ牛という突飛なビジュアルと、実はそれが示す竜巻の恐ろしさ、その後に続くこのコミカルなセリフは観客に強烈な印象を残した。おそらく『ツイスター』と言えばこの空飛ぶ牛のシーンを思い出すファンも多いはずだ。

今年、続編となる『ツイスターズ』Twisters が公開されると聞き、吹き飛ばされる牛の映像を密かに期待していたが、アメリカでは7月19日に、日本では8月1日に公開された続編では牛ではない別の家畜が竜巻に吹き飛ばされていた。牛を期待していた観客にとっては期待外れに違いないが、それが監督のリー・アイザック・チョンの前作『ミナリ』 Minari (2020)にちなんだ家畜だと思うとニヤリとできる。

『ツイスター』
Twister  (1996)

監督:ヤン・デ・ボン
脚本:マイケル・クライトン、アン・マリー・マーティン
製作:キャスリーン・ケネディ、イアン・ブライス、マイケル・クライトン
撮影:ジャック・N・グリーン
出演:ヘレン・ハント、ビル・パクストン、ジェイミー・ガーツ、ケイリー・エルウィス、ロイス・スミス、フィリップ・シーモア・ホフマン、アラン・ラック、ザック・グルニエ、ラスティ・シュウィマー

US公開日:1996年5月10日
日本公開日:1996年7月6日

Top Image: Screenshot from Twister © 1996 Warner Bros.

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