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歌って踊るメリル・ストリープの『マンマ・ミーア!』 NYプレミア

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by

Julie Walters (Left), and Christine Baranski (Right) in Mamma Mia!

『マンマ・ミーア!』NYプレミアと、メリル・ストリープの大サービス

ほぼ半年前のことだ。

2008年7月16日に、マンハッタンのミッドタウンにある歴史ある映画館、ジークフェルド劇場で、映画『マンマ・ミーア!』(Mamma Mia!)のニューヨーク・プレミアが行われた。

ご存知のとおり、『マンマ・ミーア!』はABBAのヒット曲を使った舞台ミュージカル。1999年4月にロンドンのウエスト・エンドで幕を開けて大ヒットし、2001年10月にはブロードウェイにも進出したロングラン作品である。

それが映画化され、そのプレミアに友人が招待してくれたのだ。

Mamma Mia! NY Premiere Invitation
『マンマ・ミーア!』NYプレミアの招待状

実はここだけの話、わたしは『マンマ・ミーア!』の楽しさは、ABBAのヒット曲を劇場にいる赤の他人1500人と一緒になって大声で歌うことだと思っている。

実際、ブロードウェイでこのミュージカルを見に行くと、どうしても歌わずにはいられない隣近所の観客の歌声を聞かされるハメに陥る。120ドルも払ってウインター・ガーデン・シアターに出向き、あのご都合主義のストーリーを追いながら、舞台上のプロの役者ではなく、近くに座る観客の歌声を聞かされるほど残念なことはない。

だが、今回は映画化。それもメリル・ストリープ主演の映画である。少々事情が違う。しかも、ニューヨーク・プレミアとアフターパーティーにご招待となれば、すでに先約があろうが、すべてキャンセルしていそいそと出かけるのが正しいミーハー道というものだ。

うきうきしながらジークフェルド劇場に行き、指定された座席に座って待っていると、映画が始まる前に緞帳の前にずらりとスターたちが登場した。

A blurry photo of the Mamma Mia! cast lined up in front of a curtain and screen
誰がだれか区別がつかない『マンマ・ミーア!』のキャストの写真

私の視力ではどのスターもあいにくゴマ粒くらいの大きさにしか見えず、メリル・ストリープとピアース・ブロスナンの区別もつかないと思っていたら、さすがアカデミー賞女優メリル・ストリープ様。そんなわたしの気持ちを察してくれたのか、マイクを手に取ると、後ろの席からでもよく見えるように、動物園のシロクマよろしく緞帳前を行ったり来たりしながらこうおっしゃった。

「ここにいる半分は私の親戚で、残りの半分は『ダーク・ナイト』(The Dark Knight)のチケットを買えなかった人たちでしょ!」

この一言に劇場中の招待客は大ウケ。アカデミー賞ノミネート級の名ジョークとでも言いたげな反応だ。だが実はこれ、あながち冗談でもなかったことが後でわかる。というのも、映画のプレミア上映の後、劇場の外でずらりと待ち構えるチャーターバスに乗り込み、アフターパーティー会場となったセントラルパークのボートハウスに連行されて驚いた。

入り口付近の非VIP席エリアを通り抜け、奥にある扉を開けてVIP席を見渡すと、用意されたテーブルのほぼ半分に「ストリープ」と印刷された名札が置かれているのである。

A “Streep” tent card at the Mamma Mia! after-party
アフターパーティ会場の多くのテーブルに置いてあった「STREEP」の名札

「マンマ・ミーア! 本当に半分がメリル・ストリープの親戚じゃないか!」

残念なことに、あふれかえるストリープの親戚一同に阻まれてか、この日の主役であるストリープ様ご本尊のお姿はほんのチラリとしか拝めず、見つけたら必ず抱きついて一緒に写真を撮るのだと鼻息を荒くしていた元ジェイムズ・ボンドことピアース・ブロスナンの姿もちらりとも見ることができなかった。

だが、映画にちなんでギリシャ系料理がずらりと並べられたブッフェテーブルから取り分けた料理とふんだんに用意されたワインを楽しみ、途中、ユニバーサル・ピクチャーズの社長に紹介してもらい(そして私のハリウッドデビューを確実なものとし)、食後はボートに乗ってセントラルパークの池をぐるりと回り、映画でストリープの友人、ターニャを演じていたクリスティーン・バランスキーが音楽に乗って楽しそうに踊るのを眺め、お土産もいっぱい貰って「ハリウッド映画のプレミアって本当に豪華だなぁ」と感心して帰途についたのである。

歌って踊れば、すべてよし? 映画『マンマ・ミーア!』

で、肝心の映画。

はい。出演している皆さん、それはそれはとっても楽しそうでございました。
はい。メリル・ストリープ様はどんな役でもできるんだってことを改めて思い知らされました。
はい。ピアース・ブロスナンはお歌がお下手であることがよくわかりました。

いや、しかしである。

この手のミュージカル映画を見て常々不思議に思っていた疑問が、またしてもむくむくと湧いてきた。

というのは、それこそストリープが引き合いに出した『ダーク・ナイト』のような、ありえない設定のSFものやファンタジーもの、果ては恋するロボットのアニメまで、とてもリアルに見せることができるハリウッド映画が、なぜ、昔から得意としてきたはずのミュージカル映画をちっともリアルに見せることができないのか、という疑問だ。

エドワード・ノートンが突然ナスビのヘタ頭をした緑色のCG大男(注)に変身しても、まったく違和感なく映画の嘘の世界にどっぷり浸れる。(でも、あれだけ身体がでかくなっても、腰回りにぴったり張り付いて破れず、ジッパーすら壊れないストレッチジーンズの存在には疑問を感じるが。)

なのに、ナスビのヘタ頭の緑色大男より、よほど現実的にいそうな、ギリシャに住むシングルマザーのドナ(メリル・ストリープ)が、島民を引き連れて突然歌って踊りだすと、なぜかリアルじゃない。それを見るなり、大西洋の引き波にさらわれるように、ザザーッと現実に引き戻されるのだ。

さらに、思い悩むドナに友達二人が「チキチータ(小ちゃなちっちゃなお嬢ちゃん)、どうしたの? 教えて〜」とABBAのヒット曲「チキチータ」(Chiquitita)を歌い始めた途端、

「おいおい、何が『チキチータ』だよ。このおばちゃんの名前はドナなんだから、そう呼んでやれ!」

とスクリーンに突っ込まずにはいられない。そして、大西洋を横断してポルトガルに到着しそうな勢いの引き波に、またもや現実に引き戻される。

同じ最近のミュージカル映画でも『シカゴ』(Chicago)やバズ・ラーマンの『ムーラン・ルージュ』(Moulin Rouge!)には引き波は一度も訪れないんだから、『マンマ・ミーア!』(Mamma Mia!)にもできないはずはない。なのに、なぜだ?

映画版の監督は、オリジナルのウエスト・エンド版ミュージカルの演出を手がけたフィリダ・ロイド。映画よりもオペラや舞台の演出で知られる人だ。脚本も、オリジナルの舞台版を書いたキャサリン・ジョンソンが担当している。

なるほど、舞台の魅力を知り尽くした人たちが作った映画なのだ。だとすれば、わたしが求める「映画っぽさ」が足りないのも、仕方がないのかもしれない。

となると、こうなりゃこの映画の楽しみ方はただ一つ。友達大勢と一緒に映画館に出向き、他の観客も巻き込んで大声でABBAのヒットソングを一緒に歌うのだ!

なんでも日本じゃ英語歌詞字幕付きバージョンの上映っつうのがあるらしいじゃないか。そりゃ、歌わにゃ損、損!

注:緑色のCG大男とは、1962年に出版されたアメコミ『超人ハルク』(The Incredible Hulk)に出てくるキャラクター。日本では2008年8月にエドワード・ノートン主演の映画『インクレディブル・ハルク』(The Incredible Hulk)が公開された。
この映画の前に、エリック・バナ主演、アン・リー監督の2003年公開の映画『ハルク』(Hulk)があるが、そちらにも緑色のCG大男は登場する。どちらの映画でもナスビのヘタ頭をしているところから判断するに、ハルク的にはこのヘアスタイルはかなりイケてるようである。

Mamma Mia!
『マンマ・ミーア!』
Directed by Phyllida Lloyd
Produced by Judy Craymer, Benny Andersson, Björn Ulvaeus, Phyllida Lloyd, Tom Hanks, Rita Wilson
Written by Catherine Johnson
Starring Meryl Streep, Amanda Seyfried, Pierce Brosnan, Colin Firth, Stellan Skarsgård, Dominic Cooper, Julie Walters, Christine Baranski
Music by Benny Andersson (score), Benny Andersson, Björn Ulvaeus, Stig Anderson (songs)
Cinematography Haris Zambarloukos
Editing by Lesley Walker
Distributed by Universal Pictures, Playtone
Release date(s) United Kingdom (world premiere): June 30, 2008, Canada, United States: July 18, 2008

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