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Dreamgirls『ドリームガールズ』|Film Review

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Anika Noni Rose, Beyoncé Knowles, and Jennifer Hudson in Dreamgirls (2006)

アカデミー賞で最多8部門にノミネートされながら、作品賞候補からは外れてしまった『ドリームガールズ』(Dreamgirls)が、2月17日から日本で公開される。

『ドリームガールズ』は、1981年12月にブロードウェイで開幕し、トニー賞6部門を受賞した同名舞台ミュージカルの映画化だ。1960年代から70年代にかけてのアメリカ音楽業界を舞台に、黒人女性ボーカルグループの成功と、メンバー間の葛藤、そしてショービジネスの華やかさの裏に潜む厳しさを描いたミュージカルで、モータウン・レコードや、ダイアナ・ロスが所属していた女性ボーカルグループ、ザ・シュープリームスに着想を得たことでも知られている。

これをビヨンセ、ジェイミー・フォックス、エディ・マーフィーらの大スターを起用して映画化したのが本作である。

アメリカでは2006年のクリスマスに公開され、作品賞の有力候補とも目されていた。ところが、蓋を開けてみると、歌曲賞に3曲がノミネートされたのを含め、計8部門でオスカー候補入りしたものの、作品賞ノミネートを逃し、それがまた大きな話題になった。

しかし、私にはこのノミネート結果はそれほど意外ではなかった。

それというのも、この映画には、ミュージカルの要である「歌」の扱いに、どうにも気になるところがあるからだ。

Jennifer Hudson as Effie White, Beyoncé Knowles as Deena Jones, Anika Noni Rose as Lorrell Robinson, and Jamie Foxx as Curtis Taylor Jr. in Dreamgirls
Jennifer Hudson as Effie, Beyoncé Knowles as Deena,
Anika Noni Rose as Lorrell, and Jamie Foxx as Curtis
in Dreamgirls ©︎ Paramount Pictures

「歌手が歌う歌」と「登場人物が歌う歌」

この映画の監督・脚本を担当したのは、ミュージカル映画『シカゴ』(Chicago)の脚本を書いたビル・コンドン。

『シカゴ』では、登場人物が突然歌い出すというミュージカル特有の表現を、登場人物の空想や幻想として描くことで、映画全体をうまくまとめていた。

ところが、『ドリームガールズ』では、この「突然歌い出す歌」(私はこれを勝手に「藪から棒ソング」と呼んでいるのだが)の扱いがどうもうまくない。

最初に違和感を覚えたのは、ジェイミー・フォックス演じるマネージャーのカーティスが、突然、路地で歌い出す場面だった。

それまでスクリーンの中で歌っていたのは、ディーナ、エフィ、ローレルの3人からなる「ドリーメッツ」を含む、スター発掘オーディションの参加者や、あるいは既に大スターのジミー・“サンダー”・アーリー(エディ・マーフィー)といった歌手たちだ。つまり、歌手がステージやレコーディングスタジオで、自分の持ち歌を歌っていたわけだ。

ところが、黒人向けのラジオ局でヒットしたジミーとドリーメッツたちの曲を、白人歌手がパクってヒットさせたことをきっかけに、カーティスは金を使って白人向けラジオ局に自分たちの曲を流させようとする。そのシーンで流れる「Steppin’ To The Bad Side」で、歌手ではないカーティスが、派手な格好でいきなり歌い出すではないか! これにはかなり面食らった。

Eddie Murphy as Jimmy "Thunder" Early, Anika Noni Rose as Lorrell Robinson, Beyoncé Knowles as Deena Jones, and Jennifer Hudson as Effie White in Dreamgirls
Eddie Murphy as Jimmy “Thunder” Early, Anika Noni Rose as Lorrell,
Beyoncé Knowles as Deena, and Jennifer Hudson as Effie
in Dreamgirls ©︎ Paramount Pictures

ここから、歌手がステージやスタジオで歌うナンバーの合間に、物語を進めたり、登場人物の感情を表現したりするための歌が、映画の中にポツン、ポツンと挟み込まれていく。

舞台ミュージカルなら、この切り替えは実は全く気にならない。歌手という役柄の登場人物が歌手として歌を歌い、今度はその登場人物としての気持ちを歌って芝居を進める。観客がその二つの歌の役割を自然に受け入れられるのは、そこに舞台ならではの「お約束」があり、それを受け入れることで成立するマジックがあるからだ。

ところが、これが映画の場合、事情がちと変わってくる。

映画は舞台よりも観客の視線が近くなるせいか、「リアリティ」を意識させる。そのため、それまでライブやレコーディングの場面でしか歌っていなかった人物が、何の前触れもなくいきなり歌い出して自分の気持ちを相手や観客にぶちまけ、さらには物語まで進めようとすると、こちらは思わず「ん?」となってしまうのである。

もちろん、映画で登場人物が突然歌い出すこと自体は全く問題ない。問題は、その「藪から棒ソング」を作品の中でどう位置づけ、観客にどう受け入れさせるか、ということだ。

例えば、『ウォーク・ザ・ライン』(Walk the Line)のように、歌手の人生を描き、その人生の中で歌が重要な役割を果たす「音楽がいっぱいの映画」と、『レント』(Rent)のように、登場人物が歌によって感情を吐露し、物語を進めるミュージカル映画は、そもそも歌の使い方が違う。

ところが、『ドリームガールズ』には、その二つのタイプの歌が混在しているのに、その切り替えが『シカゴ』ほど巧みに処理されていないせいで、観ているこちらはどうにも落ち着かなくなるのである。

迫力ある歌のシーンに素直に乗り切れない理由

Jennifer Hudson as Effie White in Dreamgirls
Jennifer Hudson as Effie White
in Dreamgirls ©︎ Paramount Pictures

しかも困ったことに、この「藪から棒ソング」の一つ、ジェニファー・ハドソン演じるエフィが歌う「And I Am Telling You I’m Not Going」は、ミュージカルの中でも最もパワフルな歌だ。エフィの感情が爆発するこのナンバーは、ハドソンの圧倒的な歌唱力を堪能できる、まさにショーストッパー。もちろん、映画なのだから実際にショーが止まるわけではないが、それにもかかわらず、映画館の観客たちが思わず拍手喝采したくなるほど迫力ある歌だ。

それなのに、歌に入るまでの流れに違和感を覚えてしまったせいで、私はどうにも素直に盛り上がりきれなかった。せっかくの熱唱なのに、こちらの頭の片隅では「おいおい、もっと賢いやり方はなかったのか?」という突っ込みが入ってしまうのだ。

いっそのこと、『オペラ座の怪人』(The Phantom of the Opera)や映画版ミュージカルの『プロデューサーズ』(The Producers)のように、舞台ミュージカルの様式をもっと前面に出した作りにしてもよかったのにと思ってしまう。

あるいは、エフィの感情があふれ出してそれがこの歌になるという瞬間を、映画にしかできない演出でもっと自然につなぐこともできただろうに。

歌そのものが素晴らしいだけに、その見せ方が惜しい。

役者たちは素晴らしい

もっとも、脚本と演出に不満はあるものの、出演者たちの魅力はたっぷり堪能できる。

エフィ役でオスカーの助演女優賞にノミネートされたジェニファー・ハドソンは、勝ち気で誇り高いエフィを堂々と演じている。歌唱力が圧倒的なので、『アメリカン・アイドル』のシーズン3で7位に終わったことが信じられないくらいだ。

また、ジミー・“サンダー”・アーリーを演じるエディ・マーフィーもスクリーンの中で魅力的にキラキラ輝く華やかなスターの顔と、その裏にある危うさを感じさせて素晴らしい。ローレル役のアニカ・ノニ・ローズとの相性も抜群で、二人が並ぶ場面には、独特の色気がある。

Anika Noni Rose as Lorrell Robinson and Eddie Murphy as Jimmy "Thunder" Early in Dreamgirls
Anika Noni Rose as Lorrell and Eddie Murphy as Jimmy “Thunder” Early
in Dreamgirls ©︎ Paramount Pictures

一方、ジェイミー・フォックスは、成功のためなら手段を選ばないカーティスを、見ているこちらが気分が悪くなるほど嫌な男として演じている。カーティスは実在のモータウン創業者ベリー・ゴーディ・Jr.を思わせる人物だが、単なる有能なプロデューサーではなく、成功への執着によって周囲の人間を傷つけていく男として描かれている。

そして、ディーナを演じるビヨンセ。終盤に歌う「Listen」は、ジェニファー・ハドソンの「And I Am Telling You I’m Not Going」と並ぶ、もう一つのショーストッパー。(もっとも、エフィのショーストッパーとは異なり、こちらの歌が出てくる演出は上手い。)自分自身と自分の人生を取り戻そうとするディーナの決意が溢れ出ているナンバーだ。

衣装とメイクが素晴らしい

Beyoncé Knowles as Deena in Dreamgirls
Beyoncé Knowles as Deena in Dreamgirls ©︎ Paramount Pictures

しかし、私がこの映画で何よりも魅了されたのは、実は衣装とメイクである。

1960年代末から70年代半ばという時代を反映しながら、現代の目で見てもイカしている衣装が、次から次へと登場する。それに合わせたウィッグも、手の込んだメイクも、実にお見事。

華やかなステージ衣装は色彩もシルエットも大胆で楽しいが、スターへと変貌していく女性たちのファッションの変化は眺めているだけでワクワクする。

映画館の大きなスクリーンで観ると、その鮮やかさと細部へのこだわりがいっそう際立つので、観終わったら、色とりどりのアイシャドーをまぶたに塗り、瞬きするたびに突風が起こりそうなつけまつげをつけたくなること請け合いなのだ。

ミュージカル映画としては、歌の演出にどうにも引っかかるところがあるものの、役者たちの演技を楽しみ、上手い歌をたっぷり聴き、美しいヘアメイクや衣装をビッグスクリーンでじっくり見られる、エンターテインメントな映画である。

Top Photo: Anika Noni Rose as Lorrell Robinson, Beyonce Knowles as Deena Jones, and Jennifer Hudson as Effie White in Dreamgirls ©︎ Paramount Pictures

Dreamgirls (『ドリームガールズ』)
MPAA Rating:
上映時間:2時間10分
監督・脚本:ビル・コンドン
原作:ミュージカル『ドリームガールズ』ヘンリー・クリーガー作曲、トム・アイン台本・作詞
出演:ビヨンセ・ノウルズ、アニカ・ノニ・ローズ、ジェニファー・ハドソン、エディ・マーフィー、ジェイミー・フォックス、ダニー・グローヴァー
2006年12月25日全米公開
2007年2月17日日本公開

Amazon Japan 『ドリームガールズ』(字幕版)

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